
夕暮れ、海岸、告白?
りんの書いた覚書には、ほかにもいろいろある。「清潔」に関することもあるし、「病家の秘密を口外せざる事」等々……。
翌日、りんはお休みで、環たちと海(日本海)へ出かける。
なぜか出所したばかりの横沢も一緒。
昨夜、横沢が出所祝いにそば屋で一人で飲んでいたら、『レ・ミゼラブル』を原書で読んでるインテリがいて、声をかけたら、それがシマケンだった。シマケンもまさか、いきなりりんに自分よりも早く求婚した人物と会うとは思っていなかっただろう。でもそれがシマケンの心に火をつけた?
海に着くと、直美は気を利かせて、シマケンとりんをふたりきりにする。正しくは、環も入れて3人。なんで直美はそんなにシマケン派なのか、このドラマの謎のひとつだ。
シマケンは間がもたないので「たまきちゃーん」と走り寄り抱き上げ、海のなかに入ろうとする。環は大はしゃぎ。
みるみる夕暮れになって、りんとシマケンは手頃な倒木に座る。なぜドラマでは海岸に必ず手頃に座れる倒木が一本あるのだろう。美しい夕暮れを見ながら、シマケンはこの気持ちを表現する言葉を探しあぐねる。
「私は、いとしげがぴったりきます」
りんに言われ、シマケンはこころを決める。
「いとおしい、僕は――」
ところが、環が邪魔をして、シマケンを呼ぶ。
環のもとに向かいながらシマケンは「愛おしいです。いつかこんな瞬間を書いてみたい」。いまのシマケンに言えるせいいっぱい。
色恋の言葉を超えた、人間愛の言葉「いとおしい」。状況によっていろんな解釈ができる。この風景の素晴らしさを指しているとも取れるし、りんへの恋ごころとも取れる。何気ないひと言なのに、この5文字は不思議と心に残る。
りんは、シマケンの言葉を聞き、きれいな夕暮れを見ながら、涙する。
「いとおしい」
彼女もそう言って、シマケンと環に駆け寄った。
夕日に光る波打ち際に3人。横沢が入る隙はなさそうだ。虎太郎(小林虎之介)も。
シマケン役の佐野晶哉さんのコメント
では、ここで、シマケン役の佐野晶哉さんのコメントを紹介しよう。海辺のシーンの裏話は。このシーンを経て、りんとシマケンはどうなるのか。
――これまでシマケンを演じてみて、最初のころと変化はありますか?
他のドラマや映画などと比べて“朝ドラ”は撮影の日数が長いので、役に対する思い入れや理解は深まっている気がしますし、演じていくうちに最初に思っていたシマケン像とは全然違うのだと感じました。
登場週(第3週)では自分が知っていることを話すときだけスラスラとテンポよく話し、りんに対しては不器用で少しそっけない対応をしていましたよね。それが、気づいたら美津さんや安さん、更にお隣さんとまでと仲よくなって。心を許した相手には笑顔を見せて懐に入ってしまうキャラクターなのだと演じていくうちに知りました。
こんなに笑うキャラクターだとも思っていなかったのですが、それは周りのキャストの皆さんに引き出してもらった感覚があります。台本を読み進めると「確かにシマケンはこんな人だよなぁ」と今まで僕が演じてきたシマケン像とつながる気持ちのよい瞬間もあり、パズルが完成していく感覚になります。
1年かけて撮影させていただけるからこその役作りのおもしろさを実感しています。
――第18週の最後でりんに会いに新潟へ行きますが、海でのふたりのシーンは印象的でしたね。
あのシーンはシマケンがひとつピリオドを打つような、男らしく気持ちを伝えるシーンにしたいと演出の皆さんが おっしゃっていたので、とても悩み、言い方やセリフもたくさん相談して作ったシーンです。
りんを真っすぐ見つめながら「愛おしいです」とセリフを言ったら僕もなぜか泣いていたし、そのあとの見上さんもボロボロ泣いていて。撮り終わったあと演出の方とカメラチェックしたとき、すごくいい顔をした見上さんの表情を見て「あぁよかった」と思いました。僕にとっても特別なシーンになりましたね。
――今後のシマケンへの思いは?
第18週の海のシーンでは、“朝ドラ”のなかで主人公の恋に関わる相手としての大きい仕事を一つできたのではないかとうれしくて。見上さんからすてきな表情を引き出せて「ああ、僕の仕事ってこういうことなんだな」と改めて思ったんです。「シマケンがこう見えるように」とか「シマケンの感情が」とかではなく、『風、薫る』のりんと直美というふたりの主人公がどのように見えるかが大切だと思いました。
これから先のシマケンがどうなるかまだ分からないですが、ふたりの主人公や、その家族にいい影響を与えて 作品のいいスパイスになれるようにこれからも精いっぱい演じていこうと思います。
「りんを真っすぐ見つめながら『愛おしいです』とセリフを言ったら僕もなぜか泣いていたし、そのあとの見上さんもボロボロ泣いていて」というコメントが印象的。これでもまだりんが恋愛に疎いなんてことはきっとないに違いない。








