部長と課長のがん対策#2Photo:JIJI

予防や仕事との両立支援だけではなく、治療も、さらに家族のサポートまでも広範に含む伊藤忠商事のがん対策制度。それが実現した背景には、岡藤正広会長が受け取った「あるメール」の存在があった。特集『部下と自分のために! 最新版 部長と課長のがん対策』(全6回)の#2では、他社が参考にすべき先進事例である伊藤忠のがん対策制度の全貌をくまなくお伝えする。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

「がんに負けるな」岡藤会長が全社員に
送ったメッセージの裏にあったものとは

 2017年7月21日。「がんに負けるな」というタイトルのメッセージが伊藤忠商事の全社員に届いた。送り主は岡藤正広社長(当時。現会長)である。

「人は自分の居場所はここだと思った時に、大きな力を発揮するものです。その力は業務遂行のみならず、闘病に於いても有効です。皆さんの居場所は、伊藤忠の現在のその席であって、皆さんは、かけがえのない伊藤忠の家族であることを常に忘れないでいただきたいと思います。当社は再チャレンジの効く会社です。そしてそれが伊藤忠の持つ大きな強みの一つでもあります」――。

 このメッセージと共に、がんの社員をサポートするありとあらゆる施策を打ち出すとの決意表明がそこにはつづられていた。

 がんの支援策の裏には、がん闘病中の社員が死の直前に岡藤社長に送った、1通のメールがあった。実は伊藤忠のがん対策は、岡藤社長がその社員の葬儀で涙をこぼしながら誓った渾身のものなのだ。

 次ページでは、メールの中身と、がん支援対策ができるまでの道のりを紹介。また、他社の管理職の参考にもなる、予防と治療から両立支援、家族サポートまでのいわば「全部盛り」の伊藤忠のがん支援策の中身を、詳細な図表と共にお伝えする。