今回の制度改正では、経済的な負担能力に応じて支払額を決める応能負担が強化され、国の基準である法定給付では、所得が多くなるにつれて高額療養費の自己負担限度額が高くなるように設計されている。だが、前述のように、付加給付の有無によって公的医療保険全体での応能負担は崩れている。
しかも、高額療養費は26年8月だけではなく、27年8月にも所得区分の細分化と限度額の引き上げが行われるため、給付格差は拡大していく。
そもそも、応能負担は税金や社会保険料を公平に徴収するときに使うもので、その仕組みを医療費の自己負担額に大きな差をつけるものとして利用することは社会保障の意義に反する。自己負担額の差が小さい間は、付加給付の有無もさほど問題にならなくても、その差が拡大していくと不公平感は増大する。
革新的な新薬の登場によって医療費が高額化している今、高額療養費は貧富の差に関係なく誰もが適切な医療を受けるための最後のとりでだ。今、やるべきことは法定給付の拡充による給付格差の縮小で、自己負担額の引き上げは真逆の政策だ。
国は、高額療養費見直しの理由に現役世代の保険料軽減を挙げているが、その効果は1人当たり年間1400円程度と試算されている。保険料の軽減効果より、医療費が高額になったときの自己負担額の方が大きく、朝三暮四にもほどがある。
保険料軽減の真の目的は、事業主負担を忌避する経済界への配慮だろう。だが、26年3月期の上場企業の純利益は過去最高を記録している。本当に事業主負担は日本経済のマイナス材料なのか。見極める必要があるだろう。








