また、当時の政府は、自給自足的な農業から金になる作物を育てる農業への転換を図っていたため、さらに食料事情が悪くなった。

 そのほかにも複数の失策が重なり、国内を大飢饉が襲った。 

 ほんの数年の間に数千万人が亡くなり、この事件は「人類史上最大級の人災」ともいわれる。

 なお、学者のなかには特定の生き物を減らすことへの警鐘を鳴らす人もいたのだが、その主張が受け入れられ、政府が方針転換をしたのは、四害駆除運動が始まってから2年後のことだった。時すでに遅く、農業を取り巻く生態系はガタガタ。しかたなく、ソビエト連邦から25万羽のスズメを導入したそうだ。

アメリカでクズが大繁殖し
農地と森林を侵食

 ちなみに、人間が特定の動植物を駆除・導入したことで惨事を招いた例は、ほかにもある。たとえば、クズ。秋の七草の1つで、お菓子の葛餅や漢方薬の葛根湯でおなじみの、東アジア原産のあの植物だ。

 クズは、1800年代にアメリカに導入され、当初は観賞用として育てられた。そのうち、土が流れていかないようにするのに役立つ植物として、政府の手で苗木が配られた。

 というのも、クズは繁殖力が強い。

 根で土をがっちり掴み、つるで地面を覆うこともできるから、土地を守るのにピッタリ。牛の飼料にも使えて一石二鳥……のはずだった。

 先ほど「繁殖力が強い」という話をした。

 強いというか、強すぎた。

 現地でモリモリ増え、葉で日照を遮ってほかの植物を枯らし、電線に巻きついたつるが停電を引き起こした。クズによるアメリカの被害額は、年間500億円以上にのぼるといわれる。

 また、シンプルに「気づいて!」と言いたくなる例もある。

 これは日本各地で起きてきたことなのだが、害虫を減らそうとして殺虫剤を撒いた結果、益虫も死滅し、何もいなくなったところに新たな害虫が増えてしまった。

 この薬剤はネオニコチノイド系農薬と呼ばれ、秋にみられる赤とんぼの数が減った理由の1つともいわれている。人間にとって都合がよかろうが悪かろうが、虫は虫。まあ、そうなるよね……。