習近平政権が選別する
戦略的な計算資源
本稿では、この違いを便宜的に二つの計算資源として整理したい。
一つは、国産チップを中心とする「体制内計算資源」である。党・政府機関や国有企業など、制度によって管理しやすい領域では、国産AIチップへの移行が進められている。
もう一つは、最先端AI研究や軍事研究など、性能そのものが競争力を左右する領域で用いられる「戦略的計算資源」である。ここでは、レンタルや密輸、旧世代品の転用など様々な方法を通じて、なおエヌビディアの計算資源が求められている。
要するに、「普通の仕事用」と「勝負用」で使い分けている。もしこの見方が正しいとすれば、習近平政権が現在管理しようとしているのは、半導体そのものではない。誰に、最も高性能な計算資源へのアクセスを認めるのか、だ。
実際、米メディア『The Information』は7月8日、中国政府がアリババやバイトダンス、ディープシークといった限られた民間AI大手にのみ、エヌビディア製H200の調達を「数量限定(当初の申請数の半分以下)」で容認する方向で検討していると報じた。これはまさに、「戦略的計算資源」をどの最前線部隊に配分すべきか、習近平政権が厳密に品定めしている証左にほかならない。
その資源配分こそが、中国AI政策の新しい焦点になりつつあるのではないだろうか。
いま注目すべきなのは
「誰が使えるのか」だ
米国の輸出規制は、中国による高性能GPUへのアクセスを完全に止めたわけではない。むしろ、それを調達するコストとリスクを大きく引き上げた。
そして習近平政権は、その制約の中で国産化を進めながら、体制内の「自立」と、最先端領域の「戦略」という二つの目標を、異なる資源配分を通じて同時進行させようとしている。
今後の米中テクノロジー競争を観察する際、中国のAI能力を「米国に追いつけるか否か」という単純な二元論で測るべきではない。真に問うべきは、もはや「中国は最先端GPUを入手できるのか」ではない。限られた戦略的計算資源が「どの部門へ優先的に配分されているのか」だ。
誰に最高性能のアクセスを許すのか。その選択にこそ、中国の次なるAI戦略の全貌が隠されている。日本企業にとっても、この選別の論理を見誤れば、対中リスク評価そのものが的外れになりかねない。







