JR東日本からも貸付料を徴収?
「一体評価」が広げる新たな火種

 一体評価の導入には、もうひとつの狙いが見え隠れする。前回取り上げた収支採算性は開業区間を中心に、営業主体の関連線区、並行在来線の収益から計算する。北陸新幹線敦賀~新大阪間の場合は、JR西日本区間の上越妙高~敦賀間が関連線区となり、同区間の増収分も貸付料に反映される。

 同区間と直通運転するJR東日本の高崎~上越妙高間は収支計算(貸付料算定)の範囲外なので、新大阪に延伸しても同社の貸付料は増額されない。高崎~新大阪間を一体評価し、全区間で発生する便益を示すことで、JR東日本の「受益」からも貸付料を徴収すべきという方向にもっていきやすくなる。

 国交省は2025年11月から交通政策審議会に「今後の整備新幹線の貸付のあり方に関する小委員会」を設置し、貸付料制度の見直しを議論してきた。7月22日に公表された「とりまとめ」には「公平性の観点からすれば、営業主体の同一性に関わらず、いわゆる接続利益(根元受益)とされる受益について、貸付料に適正に反映させるべきである」として、JR東日本に貸付料を設定する方針を明示している。

 なお、筆者も整備新幹線スキームの精神をふまえれば、貸付料は営業主体の同一性に関わらず適正に反映すべきと考える。北陸新幹線で東京から敦賀以西に乗り通す需要は限られるが、北海道新幹線が札幌まで延伸すれば全区間を乗り通す乗客は大きく増える。その「受益」を一切考慮せず、JR北海道だけが貸付料を負担するのは違和感があるだろう。

 とはいえ、整備新幹線は国とJRの同意を積み重ねながら進んできた。JR東日本は1991年以降、整備新幹線の取扱いを確認する合意文書(行政契約)を運輸省(国交省)と締結してきたが、経緯を無視するかのような国の方針に同社は怒りと戸惑いを感じている。

 JRは着工時に同意しない選択肢はあるが、開業31年目の貸付協定更新を拒み、営業を終了するという選択肢は現実的にあり得ない。逃げられないのをいいことに「金づる」のように扱うならば、国鉄の二の舞いである。JRは今後、全ての着工に同意するべきではない。

 JR東日本はこれまでも、「経営コントロールが及ばない他社区間で発生する貸付料は受け入れがたい」と主張してきた。確かに、もしもJR西日本が前回試算した約1200億円の貸付料を受け入れてしまい、政治が勝手にJR東日本に配分するリスクを考えたら、懸念は杞憂とは言えなくなる。

 投資効果だけで長くなってしまった。次回は「(5)並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意」を取り上げたい。