B/Cが0.5でも着工OK?
「一体評価」という新たなルール
こうした「不合理」を解決する手立てはないのか。そこで登場するのが、今回の「小浜・京都ルート」のB/C算出に用いられた「一体評価」という指標である。国交省は従来手法の個別評価はB/C=0.5ながら、一体評価ではB/C=1.1と算出し、着工条件を満たすと説明した。
一体評価とは広域ネットワークなどを段階的に整備する際、複数区間の事業を個別に評価するのではなく、ひとつのプロジェクトとして評価する手法だ。道路事業では2011年度に復興道路・復興支援道路の複数区間を同時に新規事業化する際に初めて採用され、2017年度から評価指標として正式に導入された。
金子恭之国交相は2026年6月22日の閣議後記者会見で、2022年に設置した「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル改訂に関する調査検討委員会」が一体評価の導入を適当と判断しており、敦賀~新大阪間が初のケースになると説明。「北陸新幹線の全線開業が実現する意義を踏まえ、整備計画に対応した東京―新大阪間の一体評価による費用対効果を示した」と述べた。
しかしながら、調査検討委員会の報告や取りまとめは現時点で公表されていない。一体評価におけるB/Cの計算方法なども示されていない。これまで長年にわたり使われてきた指標が事前の説明なく変更されたことに、小浜・京都ルートありきの導入ではないかとの批判がある。
B/Cは必ずしも客観的で厳密な指標ではない。時間短縮効果などの金銭換算の単位や、社会的割引率(将来価値の換算方法)などの変数次第で便益は大きく増加する。政策の評価はより現実に即した判断を行うべきであり、そのツールである指標は必要に応じて変えればよい。
また、国交省の現行「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル(2012年改訂版、2025年3月一部変更)」は、段階的な整備は「計画区間全体の評価を基本としつつ、必要により区間別の評価を併用して総合的に判断する」と記載されており、一体評価の導入そのものに問題があるわけではない。
問題は、議論の透明性、公平性だ。マニュアルは鉄道プロジェクトにおける評価の意義を「国民や鉄道利用者への説明責任(アカウンタビリティ)を果たすこと及び予算等の限られた資源の効果的な執行を図ることである」と記している。指標は「事業実施の意思決定を行うための重要かつ客観的な材料を提供」し「事業実施の意思決定プロセスにおける透明性を向上させる」ために存在する。指標の変更にあたっては、この大前提を忘れてはならない。







