「ラストワンマイル」を担う
物流業界で懸念される影響
生活道路は、全国の国道・都道府県道・市町村道の7割を占める。その生活道路での制限速度引き下げ(以下「引き下げ」と省略。)は、救急車・消防車などの緊急車両を除き、バスなどの公共交通や自家用交通を問わず、一律に適用される。
引き下げの影響を最も強く受ける業界は、就業時間に占める車両運転時間の比率が最も高い運輸業であり、その中でも「ラストワンマイル」部分を担う物流業となろう。25年の月間総実労働時間では、所定内労働時間と(所定内・外の合計である)総労働時間の2つの切り口で、全13産業中で「運輸業、郵便業」が最も長くなっている[図表3]。
25年の前年の24年4月1日には、働き方改革関連法によってトラック運転者などの時間外勤務の上限を年間960時間とする規制が適用されている。いわゆる「運輸業の2024年問題」として、さまざまな解説記事などが幅広い媒体で報じられたため、ご記憶の読者も多いことだろう。そうした労働時間短縮策の実施後にも、なお所定外(=時間外)労働時間が最も長くなった背景に、人手不足があることが容易に連想される。
今般の引き下げは、そうした状況の下で施行される。速度を落とす分だけ目的地までの到着時間が長くなり、その分だけ運転・配送時間を要することになる。置き配が相応に普及したとは言え、時間指定や不在時の再配達などがなお求められる業界ゆえ、引き下げが労働時間の長期化圧力となろう。
また、荷主の督促などを背景に引き下げ前同様に時速60キロで走行するほか、生活道路をそれ以外の一般道路と誤って解釈して60キロで走行する状況が警察に摘発される事象なども連想される。30キロ以上の超過はいわゆる一発免停の処分対象だ。元より小規模企業者の多い物流業界ゆえ、免停による実質的な運転者の減少に悩む事業者が出てくる事態を予想する。
さらに、ガソリンなど石油系燃料で動く自動車の消費燃費は、一般的に時速70~80キロ付近で燃料消費効率が最も高くなるように設定されていることが多い。最高速度を30キロとした場合との乖離幅は大きく、燃費は悪化する。低速走行時はトランスミッション(変速機)のギアの回転数が高くなり、よりギアを回さなければならなくなるため、クラッチやギアボックスに負荷が掛かる。よって車検時などに部品交換を要する可能性が高まる。いずれも、コスト要因だ。
この結果、「宅配での購入が多くを占める」価格への転嫁などが見込まれる。米・水・家電などに代表される嵩や重量がある商品が連想されるほか、生活道路を経由して集落などを巡回する移動販売車などが浮かぶ。北海道・東北・北陸地方など豪雪地帯には、冬季に巡回形態で灯油を販売する実情が認められるが、その価格上昇要因になる可能性もある。








