30キロ規制が
不動産価値を変える可能性も

 直線距離の遠近は車両での走行距離とほぼ比例し、熊本市都市政策研究所などでは、筑波大学の腰塚武志・小林純一氏が1983年に発表した論文をもとに、おおむね1.3倍と仮定している模様だ。

 既述のとおり、自家用車のみで通勤・通学する割合の都道府県別の1位・2位は山形県・秋田県だ。このため、(1)それぞれの県内で人口が最も多い山形市・秋田市の市内で勤務者数が最多と見込む地区を抽出し、(2)その地区から現実的に連日の自家用車通勤が可能な限界値と思われる直線距離50キロ圏内を設定し、(3)26年1月1日現在の地価公示価格のうち住宅地を抽出し、対数距離モデルを利用した単回帰分析をもって距離との相関を検証した。

(1)については、山形市内では山形駅近隣の城南町地区とした。01年にオープンした官民複合型高層ビルの霞城セントラルを中心点とした。秋田市内では、山王地区とした。地区内に秋田市庁舎が立地されているため、そこを中心点とした。その結果、(2)では霞城セントラルを中心に80地点、秋田市庁舎を中心に83地点となった。結果は、山形市・秋田市共に、距離が延びると価格が低下する統計的に有意な負の相関が認められた[図表6および7]。

図表6:住宅地公示地価と霞城セントラルからの距離(対数距離モデル・n=80)図表6 拡大画像表示
図表7:住宅地公示地価と秋田市庁舎からの距離(対数距離モデル・n=83)図表7  拡大画像表示

 幹線道路に出るまでの距離の長い郊外物件などは、今般の引き下げによって中心地区までの移動時間の増加を余儀なくされる。そうした事実が不動産の購入者に「物理的な距離の延長と同様」と受け取られれば、地価の下落要因となる可能性がある。

 今般の引き下げがもたらす長期的な影響は幅広い。今後も注視を続けることとしたい。

(オペレーショナル・デザイン(株)取締役デザイナー/データアナリスト〈沼津信用金庫 非常勤参与〉 佐々木城夛)