――今回のように、営業秘密や取引先情報がSNSをきっかけに漏えいした場合、企業にはどのような法的リスクがありますか。

細井弁護士:まず問題となるのは、営業秘密や取引先情報の管理です。企業が保有する重要な情報は、個人情報だけではありません。取引先との契約内容、見積金額、価格交渉の経過、開発計画、未公表の営業戦略などは、企業の競争力を支える重要な情報です。

 特に企業間取引では、秘密保持契約(NDA)を締結しているケースも多く、SNSへの投稿をきっかけに取引先の情報や営業秘密が漏えいした場合には、契約上の秘密保持義務違反や、債務不履行責任が問題となる可能性があります。

 また、漏えいした情報の内容や契約内容によっては、取引先から損害賠償請求を受けることもあります。競合他社へ情報が流出すれば、企業の競争上の利益が損なわれるだけでなく、取引先との信頼関係が大きく損なわれ、取引停止や契約解除といった事態に発展することも考えられます。

 さらに、法的責任だけではなく、「情報管理が甘い会社」という評価が広がることで企業の信用が低下し、新規取引や既存取引にも影響を及ぼすことがあります。実務上は、こうした信用の毀損こそが、企業にとって最も大きなダメージとなるケースも少なくありません。

故意でなくても
責任は生じる

――故意ではなく、写真に写り込んでしまっただけでも責任は生じるのでしょうか。

 はい。秘密保持義務違反や情報漏えいに関する責任は、故意に情報を漏らした場合だけに生じるものではありません。

 投稿前の確認が不十分だったり、「この程度の解像度なら読めないだろう」と安易に判断したりして投稿した結果、営業秘密や取引先情報が漏えいした場合でも、企業は秘密保持義務違反や情報管理体制の不備を問われる可能性があります。

 特に、取引先との間で秘密保持契約(NDA)を締結している場合には、過失による漏えいであっても契約違反となり得ます。そのため、「うっかり写り込んでしまった」「漏えいさせるつもりはなかった」という事情だけで責任を免れることはできません。

 さらに、近年はAIによる画像鮮明化技術などが急速に進歩しています。投稿時には判読できないと思われた情報でも、後から第三者によって読み取られる可能性は十分にあります。そのため、従来の感覚で「見えないだろう」と判断すること自体が危険になってきています。

 企業としては、「見えないと思った」ではなく、「見える可能性がある」という前提で情報管理を行うことが重要です。