故郷から遠く離れたところで病気になって、きっと心細いだろうから、同郷の人間が顔を出してやれば、少しは気持ちが安らぐのでは、と気遣ってくれたのだろう。そう思うと、本当に少しあたたかい気持ちになった。

喜んだのも束の間…
お見舞いの目的は勧誘だった

 だから、こちらもすごく愛想良く対応していたのだが、話をしている途中で、どうも様子がおかしくなった。

 救いに来てくれたというのだ。救い?ちょっと言い方が大げさじゃない?と首をかしげていたら、宗教だった。大学に入ってから、宗教に入信したのだそうだ。

 宗教に同郷とかそういうことは関係ないが、同じところからやってきた人間が、当地で宗教に染まったということには、やはりショックを受けてしまった。

 そして、わざわざお見舞いに来てくれたと、喜んでいただけに、がっかりしてしまった。喜んで対応してしまったことが、恥ずかしかった。相手からしたら、入れ食い状態の魚に思えたことだろう。

「帰ってくれ!」と帰してしまった。彼は拒否されるのには慣れているようで、いっこうに平気で、その様子に、ようやくこわくなった。

 次は集団でやってくるのではと、しばらく不安だったが、それっきりだった。まだましな人だったのだと思う。

親戚が10人以上を連れて
自宅に押しかけてきた

 集団でやってきたのは、親戚のほうだった。

 ようやく外泊許可が出て、一時的に部屋に戻ったときのことだ。親から電話があり、東京にいる親戚がお見舞いに行きたいそうだ、と言われた。遠い親戚で、昔一度会ったことがある程度だった。同い年くらいで、東京に住んでいることは知っていたが、まったく交流はなかった。

 それがわざわざ東京からつくばまで見舞いに来るというのだ。

 短い外泊許可でようやく部屋に戻ったところだし、身体は弱っているし、起き上がるとトイレに行きたくなるから困るなあというのが正直な気持ちだった。

 ただ、親が言うには、その子は、アメリカに留学して、むこうでつらい目にあって、心を病んだようになって戻ってきたのだそうだ。つらい目にあったどうし、話がしたいんじゃないか、ということだった。