生保&少短「みなし入院」騒動終息への内幕、足元では第7波対策で“商品力低下”も進行

「みなし入院」特例支払い
元通りへの長かった道のり

 生命保険会社と少額短期保険各社は、新型コロナウイルス感染症のまん延による「みなし入院」のくびきから、ようやく解放されそうだ。

 新型コロナ感染症の「みなし入院」に対する給付金支払いに右往左往することになった発端は、2020年4月に行われた金融庁による要請だった。当時、新型コロナが急拡大し、入院患者が急増して全国で病床がひっ迫。本来は病院に入院しなければならない患者が、やむを得ず宿泊施設や自宅で療養しなければならない事態に陥っていた。

 懸念されたのが、実際に病院に入院できた患者は生保や少短からの入院給付金の支払い対象となるが、入院できなかった患者は支払い対象から外れてしまうことだった。約款の定義によれば、自宅での療養は入院に該当しないからだ。

 そこで金融庁は20年4月10日、各保険業界に「前例にとらわれることなく、柔軟な保険約款の解釈・適用」を強く要請。保険会社も社会的使命に鑑み、あくまでも特例として、みなし入院でも保険金・入院給付金を支払うことになった。

 だが、22年1月からの第6波は、保険会社の“特例として支払う”前提を変えてしまうほどの巨大な波だった。

 感染者の多くが自宅療養ですむ軽症患者だったが、みなし入院は入院給付金の支払い対象であるため、支払い額が激増。日本生命保険、第一生命保険、明治安田生命保険、住友生命保険の大手4生保が22年第1四半期で支払ったみなし入院に対する入院給付金は約840億円に上り、21年度の12カ月間で支払った額をわずか3カ月で軽々と超え、約2倍に達した。

 そこに押し寄せたのが、さらに大きな第7波。政府は全国の保健所や医療機関の負担を軽減するために、感染者の全数把握を見直す動きを本格化。それに合わせて、8月初旬には生保協会も“特例から通常へ”戻す道を探り始めた。