なんというタイミングだと嫌な気がして、「まだ若いんで、お墓とか買いませんから」と言ったら、「でも、あなたは今のうちに買っておかれたほうがいいのでは?」と、何か含みのある言い方をする。こちらが難病と知っている様子なのだ。なぜ???と不思議だった。

 次の電話は、宗教の勧誘だった。まったく知らない人からだった。「どうして電話番号を知っているんですか?」と聞いたが、答えてくれない。ランダムにかけていて、たまたまかと思ったが、これもどうやらこちらが難病と知っている様子なのだ。病気が治るというような勧誘の仕方なのだ。その日はそれから、お墓を買えという電話と、宗教の勧誘の電話が、いろんなところから、ひっきりなしにかかってきた。これには本当に驚いた。

 どうやら、病院からそういう情報が漏れるらしい。病名と住所と電話番号のリストを売る人がいると、後から聞いた。

 退院したばかりで、まだ寝ていなければならないし、また入院することにもなるような状態だというのに、なんでこんな余計な面倒までと、なさけなかった。

親身な見舞い客が
怪しい商品を勧め始める

 こんな勧誘の仕方では誰も入信しそうにないものだが、そんなことはなかった。6人部屋にいる間にも、たくさんの人が勧誘にひっかかってしまった。

 なぜか?病気が治らないからだ……。藁にもすがるというが、まさにそういう心境になってしまうのだ。自分ががんばっても治らない、医師にも治せないとなると、もう頼るものが他にないではないか。

 だから、宗教に入ってしまった病人を、ダメだと思う気持ちはまったくない。しかし、そういう病人の弱った気持ちにつけこむ宗教は、許せない。

 宗教だけではない、怪しい自然療法や、サプリ、万病の治る石とか水とか、いろんなものが6人部屋にはやってくる。オカルト博覧会だ。

 ぜんぜん知らない人がいきなりやってくる場合もあるが、たいていは親戚や知り合いだ。

「病気になったと聞いて、心配してやってきたの」と、そういう人たちは、最初はとても親身でやさしい。