私の弟はかなりいい大学を出て某大企業に入った。海外勤務もあり部長職までいった。しかし親の介護で早期退職、1回はフリーターになり、時にはアマゾンの倉庫勤務に。

 しかし彼は、ここでも持ち前の楽天性を発揮する。プライドがどうのこうのなんていっさいなし。

「若い人がいっぱいいて本当に楽しい」

 今は学習塾の講師をしている。友だちに頼まれたそうだ。あまりお金にはならないが、

「子どもといるのは天職だ」

 彼は死ぬまで働いて、楽しみきってしまうような気がする。

働くつらさは
まだ捨ててはいけない

 日大の理事長を引き受けたのは68歳の時。自分でも驚くぐらい自然に、

「面白そう、やってみよう」

 と思った。自分がもうじき70歳になるとは考えてなかったのは不思議だ。

 理事長の仕事は忙しく、毎日大学本部に出かけている(編集部注/現在は退任)。いろいろなことがあったが、なんとかこれを乗り越えようと自分に言いきかせてきた。よく親しい友人たちに言う。

「おかげでものすごく強い人間になった。だけど人間、70歳になってこんなに強くなってどうするんだ!!」

 が、まだまだ生きるよ、まだまだ働くよ、と皆が口を揃えて言う。

 もし70を過ぎても働く場所があったとしたら、それはその人がそのように生きてきたからだ。誇りに思っていい。

 そしてどんなに小さな仕事でも、頼まれたら引き受ける。その仕事を心を込めて遂行する。

 昨年、登下校中の小学生の列に、乗用車がつっ込むという事件があった。子どもたちに逃げるように叫び、犯人を車からひきずり出したのは、元大阪府警の警官だった。子どもたちの「学校支援員」として立っていたのだ。取材に、

「子どもを守るのは、元警官として当然のことです」

 と答え、私は心をうたれた。年をとってからの働き方のいい例だろう。まず世の中のためになること、を考えていけば何かが見つかる。

 何にせよ、働くことは楽しい。