SNSで飛び交う「あの人は反社会性パーソナリティ障害だ」という無責任なレッテル貼り。そもそも、この言葉の本当の意味をご存じですか? いわゆる「サイコパス」との違いや知られざる症状について、精神科医が分かりやすく解説。さらに、他人の病名を勝手に推測して発信することがはらむ、医療倫理に関わる「ある重大な危険性」にも鋭く迫ります。誰もが発信者となる今だからこそ、胸に刻んでおきたい教養です。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・斎藤順)
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。

【精神科医が教える】身近に潜む「反社会性パーソナリティ症」とは何か?Photo: Adobe Stock

反社会性パーソナリティ障害を取り上げる理由

本日は「反社会性パーソナリティ障害」とは何かについてお話ししたいと思います。

このテーマを選んだきっかけは、見ず知らずの第三者が特定の人物に対して「あの人は反社会性パーソナリティ障害だ」と勝手に決めつけるようなケースがあり、少し問題になっていると感じたからです。それならば、皆様に反社会性パーソナリティ障害というものについて、正しく分かりやすくお伝えしようと思った次第です。

「人格障害」から「パーソナリティ症」への名称変更

皆さんも「パーソナリティ障害」という言葉を聞いたことがあるかと思います。もともとは「人格障害」という言葉が使われていましたが、「人格」という言葉が非常にネガティブで嫌な印象を与えるため、英語をそのまま訳した「パーソナリティ障害」と呼ばれるようになりました。

さらに最新の診断基準では、差別的なニュアンスをより減らそうという目的から「パーソナリティ症」という名称に変更されています。しかし、長らく「パーソナリティ障害」と呼ばれていた時代が長く、新しい名称はまだあまり普及していない印象があるため、今回は馴染みのある「パーソナリティ障害」という名称でお話しさせていただきます。

パーソナリティ障害とは何か?

パーソナリティ症およびパーソナリティ障害とは、基本的には「性格」に関するお話です。

臆病な性格、自信満々な性格、他責的または自責的な性格など、人によって性格が異なるのは当たり前のことです。しかし、その性格があまりにも極端すぎて日常生活に支障をきたし、本人や周囲の人が困り果ててしまう事態が起きることがあります。

このように、性格が極端すぎて社会的な不適合が生じている状態に対して与えられた診断名が「パーソナリティ障害(症)」であると大雑把に解釈してください。

パーソナリティ障害にはさまざまなグループがあり、それぞれに固有の名称がつけられています。「反社会性パーソナリティ障害」も、そのうちの1つです。

反社会性パーソナリティ障害の誤解と実態

一般的に「サイコパス」と呼ばれる人たちの一部が、この反社会性パーソナリティ障害に含まれていると考えられます。ただし、サイコパスは正式な病名ではないため、完全にイコールではありません。

反社会性パーソナリティ障害については、「平気で嘘をつく」といった特徴がよく挙げられますが、それはあくまで症状の1つに過ぎません。全般的な特徴としては、法律や礼儀を守ることに対して全く無頓着であり、自分のやりたいことのためならルールを平気で逸脱してしまう点にあります。

普通であれば「これは法に触れるからやってはいけない」と我慢するところを、踏み越えて何でもやってしまうタイプの人たちです。過去に非行歴や犯罪歴を何度も繰り返し、逸脱行為を何とも思っていないような極端なパーソナリティ傾向を持つ人に対してつけられる診断名です。

したがって、単に「約束を守らない」「言ったことを実行しない」といった日常レベルの話で診断されるものでは決してありません。