2年ごとの異動が
長期戦略を削っていく
日本の官僚機構は、およそ2年ごとにポストを異動させるローテーション人事を前提として設計されている。しかも、異動先は往々にして局を超えて業務内容が大きく異なる分野を担当させるケースが多い。
戦後の日本の官僚制は、汚職防止と人事の公平性確保のためにローテーションを制度化した経緯がある。これは人材の偏在を防ぎ、組織全体としての柔軟性を確保するという点では一定の合理性があるが、戦略的思考の観点から見れば致命的な弱点も抱えている。
担当者が2、3年で交代する仕組みの下では、1つの政策分野に長期的な視点から腰を据えて向き合うことが難しい。前任者の残した資料や引き継ぎメモを基礎に業務は回るが、長い時間をかけて築かれるべき信頼関係やネットワーク、相手国の内部事情への深い理解は、担当者の異動とともに分散し希釈されてしまう。また、ある特定分野についての知見・経験・人脈に基づいた発想も育たない。
本来であれば10年、20年という時間軸で蓄積されるべき知見が、2年ごとの人事サイクルに切り刻まれ、「その年度をどう無難に乗り切るか」といういかにも“役人らしい”短絡的思考に置き換えられ、長期的な戦略は生まれてこないのである。
そもそも官僚制という組織は、本質的にリスク回避型の制度である。失敗すれば批判を受けるが、前例を守っていれば責任を問われにくいという構造の下では、組織は自然に保守的な行動を選びやすい。この性質は行政の安定性を支える一方で、戦略のように不確実性を伴う政策分野では弱点にもなり得る。
こうした制度的性質の上に、ローテーション人事と不可分の思考様式として、官僚組織では前例踏襲と法令遵守が仕事の質を測る主要な基準になりがちである。もちろん、法令を守り、行政の継続性・公平性を担保することは官僚制の根幹であり、否定されるべきものではない。しかし、法令遵守それ自体が目的化すると、「前例を外さないこと」や「形式的な適法性を確保すること」が、いつの間にか本来の政策目的の達成より優先されてしまうという逆転現象が起きる。







