黒田東彦の世界と経済の読み解き方Photo by Masato Kato

ダイヤモンド・オンラインの連載『黒田東彦の世界と経済の読み解き方』では、いずれも財務官を務めた前日本銀行総裁の黒田東彦氏と前国際通貨研究所理事長の渡辺博史氏の対談の詳報を複数回にわたってお届けする。対談詳報の最終回では、2人の古巣である財務省が不人気な理由や、あるべき税制の姿、2026年を切り開くためのキーワードを聞いた。(聞き手・ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

民主党政権と安倍政権の官邸主導が
官僚志望の学生を半減させた

――お二人とも財務省出身ですが、最近は財務省への批判も強まっており、東京大学など有名大学の学生からの就職人気も落ちています。

黒田東彦 それは財務省だけではなく、霞が関全体の傾向ですよ。国家公務員試験を受験する人の数が半減してしまっています。その理由について、賃金が安いからだと説明されていますが、賃金はずっと前から安いんですよ。いま人事院は、賃金を上げようとしていますが。

 なぜこうなってしまったかといえば、民主党政権と安倍政権です。官邸が個別案件についてまで、ああしろ、こうしろと言ってくるようになった。小泉政権の時の官邸主導は、「こういう方向でやれ」と、竹中平蔵氏や塩川正十郎氏などの担当大臣に大まかな方針を投げて、大臣が官僚を使って分析し、必要な政策を立案・実行し、うまくいかなければ修正するという官邸主導でした。

 ですが、民主党政権と安倍政権は、具体的にあれをやれ、アベノマスクをやれなどと、官邸から指示をします。こんなの意味がないと官僚が感じても、やらなければクビになりますから、だからやるだけやるのですが、案の定、やっても効果がない。そして官邸は検証もしないし、反省もしないわけですよ。そういう状況を、学生たちはしっかり見ています。霞が関に就職しても、今後状況が変わる見込みがないならば、意味がないと。だから低賃金は前から同じなのに、志望者が半減しているのです。

 ちなみに、日銀の志望者は半減なんてしていません。相変わらずたくさんの志望者がいます。これは日銀が98年の日銀法改正で完全に独立しましたので、民主党政権のときも、安倍政権のときも、官邸からの指示はないし、指示があってそれを受けなかったとしても平気なのです。学生は、就職先の状況をとてもよく観察しています。

 要するに、これじゃあもう霞が関に行ってもしょうがない。だから国家公務員の志望者が半減しており、賃金を上げれば解決する話ではないんですよ。これを変えるならば、ときの政権が、民主党政権や安倍政権から続いてきた官邸主導の仕組みを戻すことを決断しないと駄目でしょう。