「今は辛くても、引退すればすべてが報われる。その時こそ、好きなだけ旅行に行き、家族との時間を楽しもう」――。この「老後待ちキャリア」の計画は、一見すると極めて堅実で合理的な人生設計に思えます。しかし、本当にそうでしょうか。なぜ私たちは、身体も若くエネルギーに溢れた「現在」という貴重な時間を犠牲にして、遠い「老後」に幸せを先延ばしにするのでしょうか。書籍『やりたいことが見つかる 世界の果てのカフェ』の中から、その矛盾を暴く、あまりにも有名な寓話を紹介します。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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「手段の目的化」の滑稽さ
ある美しい南の島で、のんびりと釣りをしている漁師がいました。
そこへ都会から来た優秀な実業家が通りかかり、漁師にアドバイスをします。
「もっと大きな網を買い、船を増やし、会社を立ち上げて大儲けすべきだ」と。
漁師が「それで、そのあとはどうするんだ?」と尋ねると、実業家は得意げに答えます。
「引退して南の島に移り住み、朝からのんびり釣りをしたり、家族と素晴らしい時間を過ごすのさ」と。
漁師は静かに微笑んで言いました。
「私は今、すでにそれをやっているよ」
この話は、私たちが必死にキャリアの階段を駆け上がるプロセスで、どれほど盲目的に「手段を目的化」しているかを痛烈に皮肉っています。
私たちは「いつか自分のやりたいことをやるため」に、やりたくない仕事を何十年も続け、心身をすり減らしています。
しかし、その「いつかやりたいこと」の多くは、実は今すぐにでも、小さな形から始められることばかりなのです。
――『世界の果てのカフェ』より
やりたいことを老後まで先延ばしにするな
もし、あなたの「引退後にやりたいこと」が、読書であり、自然の中での散策であり、家族との団欒であるならば、それを今週のスケジュールに数時間だけでも組み込むことは本当に不可能なのでしょうか。
大金を稼ぎ、定年を迎えるまで、それらを手に入れる資格はないと思い込んでいないでしょうか。
人生の時間は有限であり、明日の保証は誰にもありません。
「いつか自由になるために、今はやりたくない仕事で稼ぐ」という人生設計の矛盾に気づいた瞬間から、私たちのキャリアの目的は変わり始めます。
老後の楽しみにしていたことを、今この瞬間から「前借り」して体験していくこと。
それこそが、会社員としての生活を豊かにし、老後という時間をさらに深化させる唯一の方法なのです。
――『世界の果てのカフェ』より
あなたの「死ぬまでにやりたいことリスト」を1枚の紙に書き出してみましょう。
そして、その中から「今週末、あるいは今日のうちに、30分以内で体験できること」を1つだけ選んで実行してみてほしいです。
老後の夢を今に引き戻し、小さく実行し始めること。
それだけで、会社にしがみつくための「老後待ち」の苦役から、あなたは解放されます。




