下水道から道路や橋へ
JR西日本が狙う「インフラ再構築」
グループ会社のJR西日本後藤テック、富士電機製作所の事例から見てきたが、JR西日本グループが今回、下水道展に参加した目的は「総合インフラマネジメント事業 JCLaaS(ジェイクラース)」の売り込みだ。
JCLaaSの概念図(JR西日本提供) 拡大画像表示
JCLaaSはJR西日本を中心に、NTTドコモビジネス、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、日本政策投資銀行の6社が提携する総合インフラマネジメント事業である。施設の老朽化や人手不足、財源不足に悩む自治体に対し、鉄道という巨大インフラを365日走らせ続けてきた技術力・対応力・マネジメント力でインフラ再構築を支援する。
自治体のインフラ維持業務は各分野が縦割りで、個別業務単位の単年度の契約をしてきた。この体制では長期的視点に立った維持管理・更新を行いづらいため、JR西日本が参加する共同企業体が包括的・長期的契約を締結。複数・他分野の施設を「アセット群」と捉え、維持・点検・修繕・更新の一気通貫管理を、市区町村・都道府県の垣根を越えて行おうというものだ。
平成はインフラが壊れたら修理する「維持管理の時代」だったが、令和は人口減少に対応して設備を更新する「リストラクチャリングの時代」である。とはいえ、厳しい財政状況で大規模な更新は難しい。
そこで鉄道の経験を生かし、すぐに更新すべき部分、中長期的に更新する部分、修理や長寿命化で対応すべき部分を見極め、必要な投資を効率的に行う手助けをするというわけだ。
予算不足に苦しむ自治体を財政面でも支援する。国の補助金制度では賄いきれない更新需要に対応するため、JCLaaSが業務提携するメガバンクが資金を融資して、更新費用の平準化を図ろうというものだ。鉄道新線の資金調達スキームにも通じる話で興味深い。
これまでのところ、前述のJR西日本後藤テックの事例に加え、京都府福知山市の「上下水道事業等包括的民間委託事業」、城陽市の「水道事業及び下水道事業における包括的民間委託事業」など、上下水道の管理・更新が中心だが、これに特化しようというわけではない。
担当者に聞くと上下水道の次は、道路、公園、橋梁の管理業務受託を狙っているそうだ。道路は上下水道を含むさまざまなインフラを収容しているため、それぞれ工事のたびに掘り返すことになりがちだ。それらを一括して管理すれば、工事のタイミングを合わせて費用を抑えるなどの効率化が可能になる。また、これらインフラは複数の自治体をまたぐものも多いため、自治体間の連携も主導したいという。
ただし、JCLaaS事業の目的は「実作業」の受託そのものではない。それらは地元企業や協業パートナー企業に委ねつつ、JR西日本は統括管理を担うことで、マネジメント料収入を得ていくビジネスモデルだ。また、大規模な更新工事では、グループのゼネコン会社が地元企業を束ねる役割を果たすなどして、グループ全体で収益を最大化したい考えだ。
JR西日本は4月に発表した「中期経営計画2030」で、経営の重点分野に「インフラソリューション」を追加した。ノウハウを獲得し、実績を積み重ねなければ収益化は難しい分野ではあるが、今後の経営の柱として時間をかけて育てていく覚悟のようだ。
もっとも、その意義はシンプルだ。地域から活気が失われれば鉄道の利用者も減ってしまう。地域とともに生きる鉄道事業者として、地域に貢献できることは多々あり、それは自分たちのためでもある。担当者は「JRさんが来てくれたから、なんかちょっと変わってきたね、なんか住みやすくなってきたねって思ってもらいたい」と語った。







