仕事で挫折したとき、「もっと頑張らなければ」と自分を奮い立たせる人は少なくありません。しかし、その努力が自分を追い詰めることもあります。マッキンゼーでの挫折を猛努力で乗り越え、転職先のエゴンゼンダーで最年少で日本代表にまで上り詰めた著者も、その一人でした。本稿では、世界のトップ層を見てきたエゴンゼンダーのパートナー・元日本代表でスタンフォード大学客員研究員の丸山泰史氏による新刊『「考えてばかりで動けない」がなくなる真面目の縛りを解く方法』から一部を抜粋・編集し、頑張るほど抜け出せなくなる「真面目の罠」の正体を紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局 井上敬子)

「もっと頑張れば何とかなる」が危ない…マッキンゼー出身エリートが陥った「真面目の罠」Photo: AdobeStock

マッキンゼー2年目での強烈な挫折体験

 拙著『真面目の縛りを解く方法』の「はじめに」でもお伝えしたように、私自身もかつて「真面目の罠」にハマり、大きく空回りしていた人間です。

 マッキンゼー時代の私は、強烈な欠損感覚に縛られていました。入社早々、上司からダメ出しを受け、周囲の天才肌でセンスの良い先輩たちに圧倒される日々。

「自分は戦略やマーケティングのセンスがないから、必死に努力してカバーするしかない」

「でも、いつかメッキが剥がれて、使えない奴だとバレてしまうのではないか」

 そんな底知れぬ恐怖を抱えながら、常にガチガチになって働いていたのです。

 そして、2年目のシンガポールでのグローバル研修(私にとって仕事で初めて行った海外でした)で、手痛い挫折を経験したのは本書の「はじめに」でも書いた通りです。

 世界中から血気盛んな同世代が集められ、与えられた課題にチームで取り組んでいくという研修で、周りの外国人がまるでスポーツのように瞬発的に発言していくなか、英語もまだおぼつかない私は真面目さゆえに全く発言できません。そして「発言していない奴にはフィードバックする言葉もない」という一言でとどめを刺されたのです。

 それは世界が一変するような衝撃的な出来事でした。

「ひょっとすると、自分の努力の方向性が間違っていたのではないか」

「真面目に努力しているだけでは世界で戦えないのではないか」

 そんな不安がわきあがってきたのです。

挫折しても「より一層、努力する」という解決策しか知らなかった

 とはいえ、真面目な人間は挫折したとき、「より一層、真面目に努力する」という解決策しか持っていません。「悔しさをバネにもっと頑張ろう」という気持ちで、1年間ドイツに行き海外で戦う筋肉をつけることにしました。さらに「INSEAD」というヨーロッパトップのビジネススクールへ行き、「惨めだった自分の記憶を上書きしたい」という一心で努力し、結果としては、トップ10%という成績を収めることもできました。

 その後、スイスのコンサルティングファームの「エゴンゼンダー」へ転職してからも、「早く成果を出さねば」と朝7時から夜10時まで全力で働き続け、最年少で日本代表に、翌年には兼務でグローバル経営チームメンバーにも抜擢されました。

 周りからすれば順調なキャリアに見えたかもしれません。が、実のところ私はずっと苦しさを抱えていたのです。

 仕事を一人で抱え込みすぎた結果、人間ドックの数値は最悪になり、心身が壊れるギリギリの限界状態に陥っていました。

 さらに悪いことに、代表である私が余裕を失ってガチガチになっていたことで、その悲壮感や緊張感が伝播し、組織全体が硬直して柔軟性を失っていました。

 しかしあるとき、お世話になっている方に言われた言葉が私を決定的に変えました。

「丸ちゃん、顔色悪いよ? そんなに真面目に頑張りすぎていたら壊れちゃう。海外の同僚とか、すごいと思ってるかもしれないけど、実は意外といいかげんだよ」

 その言葉にはっとして、私は「自分を縛っている過剰な真面目さ」に気づいたのです。
 そのままいけば、世界本社の経営幹部からさらにその上のポジションへという可能性があった中、私は初めて自分の意思で昇進の階段を降りることにしました。そして、日本代表の任期6年を満了した後、キャリアブレイクを取ることとしたのです。

 真面目だからこそ、真面目に頑張るしかないと思う。だからこそ、そこから脱することができなくなる。それこそが、真面目の罠の恐ろしさです。