美術館に行った際、「同行者が鑑賞するのが早くて置いて行かれた」「じっくり鑑賞したつもりだったけど、30分しか経っていなかった」という経験はありませんか。本記事では、『「いまを生きる力」を取り戻す 感性の教室』の著者・末永幸歩氏に、美術館を「30分で出てしまう人」の特徴についてお話しいただきました。

美術館 鑑賞Photo: Adobe Stock

すぐに鑑賞し終わる人の特徴

――ただいま、大阪の中之島美術館で「フェルメール展」が開催されています。こうした大人気の美術展が始まると、多くの人が会場に詰めかけますよね。

しかしその一方で、SNSや知人の話を聞いていると、美術鑑賞についてある「極端な二極化」が起きていることに気づくんです。

一方は、展示室を「30分足らずでサーッと見終わって出てきてしまう人」。もう一方は、同じ展示室に「2時間、あるいはそれ以上じっくり滞在して満喫している人」。この両者の間には、一体どのような違いがあるのでしょうか?

末永幸歩氏(以下、末永):それは非常に興味深い問いですね。

実は、美術館を「30分で見終わる人」と「2時間かけて周る人」の間には、絵の知識やセンスの有無はまったく関係ありません

最大の違いは、美術館に入ったときの考え方にあります。

――周り方、ですか?

末永:はい。

まず「30分で見終わってしまう人」の考え方を覗いてみましょう。

このタイプの方は、展示されている作品のすべてを、入り口から順路に沿って「1枚残らず、同じ熱量で完璧に見よう」としています。

しかし、人間のエネルギーには限界があります。

すべての絵を均等に、かつ真面目に見ようとすると、最初の数枚で時間もかかり、脳が飽和状態になってしまうんです。

結果として、作品そのものを自分の目で見る時間は平均「17秒」程度になり、あとは作品の横に添えられたキャプションを読んで、タイトルや年代などの『正しい情報』をなぞるだけになってしまいます。

――「全部見なきゃいけない」というのは思い込みなんですね。

末永:そうなんです。

それでは、新しい情報を勉強している感覚になってしまいます。

だからすぐに脳が疲れて、30分ほどで「もう全部見た(こなした)から帰ろう」となってしまう。

非常に真面目であるがゆえに陥る、脳の罠だと言えます。

2時間かけてじっくり回る人の考え方

――では、逆に「2時間かけてじっくり回る人」は、何が違うのでしょうか?

末永:人にもよりますが、そうした人は「全部見ようとしない」のではないでしょうか。

私が実践している鑑賞スタイルもそうなのですが、美術館に入ったら、まず入り口から出口まで、普通のお客さんのように解説を見ながら全体をざっと流して歩いてしまいます。

なぜなら、「この先に一体何が展示されているんだろう?」という小さな不安を残したままだと、目の前の絵に集中できないからです。

そして、全体を流す中で、「なんか気になるな」と感じる『自分だけのお気に入りの絵』を、直感で決めるんです。

――展示されている何十点もの作品の中から、お気に入りを選ぶわけですね。

末永:そうです。

そして全体を見終わった後、その絵の前まで逆戻りします。

そして、その作品を徹底的に鑑賞する。

他の絵は、最初の「流し見」のままで全く構わない、と考えるんです。

だからこそ、特定の1点に集中させることができ、結果として2時間があっという間に過ぎるほど、深く豊かな時間を過ごすことができます。