「誰かと一緒に遊べる楽しみを持つことは大事だと思います。もちろん、人と関わること自体が苦痛な人もいるので、すべての人に勧めるわけではありません。でも、電子の世界でも現実の世界でも、誰かと一緒に何かを楽しめれば、いずれそこから縁ができるんじゃないかなと思います」

 これといった趣味はなく、休日も一人サウナに行っている私にとってはなんとも耳が痛い話だ。

「龍が如く」桐生一馬のコスプレをした39歳のウルトラFさんはコスプレ歴は約1年3カ月ほどと短いが、コスプレを通じて友人がどんどん増えている。

ウルトラFさん 撮影=筆者ウルトラFさん 撮影=筆者

「孤独はあまり感じないですね。特にコスプレを始めてからは仲間や知り合いがどんどん増えました。同年代だけでなく、若い友達も増えましたし、『若い子たちに負けないように頑張ろう』『もう少し若さを保とう』と思うようになりました」

 ウルトラFさんは自分で動くことが中年の孤独を避けるには大事ではないかと語る。

「年齢を重ねると、人とのつながりってどんどん減っていくと思うんです。だから、自分から積極的につながりを作っていくことが、これから孤独にならないための予防策になるのかなと思っています」

 ただ、取材を続けるうちに、私のように「中年の孤独」を感じていない人にも出会った。

Kazumiさん 撮影=筆者Kazumiさん 撮影=筆者

「ゴールデンカムイ」土方歳三のコスプレをしていたKazumiさんは、今年還暦を迎え、コスプレ歴30年以上。コスプレを通じて友達はたくさんできたという一方で、こう話す。

「僕は一人が好きなんです。一人でいるほうが楽なので、孤独を感じることはありません。そもそも友達を作るためにコスプレをしているわけではない。楽しいから続けていたら、結果的に友達ができたということです。コスプレについても衣装や小道具を自分で作るのが楽しいからやっているし、だから30年以上も続けられるんです」

48歳、男性コスプレイヤーが
“一番孤独を感じた”瞬間

 さらに「千と千尋の神隠し」のカオナシに扮した48歳の田中さん(仮名)は、コスプレ仲間と呼べる友達は特にいないと話す。それでも孤独は感じていない。

「コスプレを始めたのは8年前。コミックマーケットを歩いていたら、コスプレをしている人がたくさんいて、自分にもできそうなものはないかなと思って探し始めたのがきっかけです。コスプレ仲間と呼べるような友達は特にいませんが、寂しいとは感じません。イベントに参加して、写真を撮ってもらったりすること自体が楽しいんです」

田中さん(仮) 撮影=筆者田中さん(仮) 撮影=筆者

 田中さん(仮)の言葉で強く刺さったものがある。

「一時期、何をやっていいのかわからないときがあって、そのときが一番孤独を感じました。でもコスプレをやるならどうすればいいんだろうと調べ始めたら、だんだん楽しくなってきたんです」

 コミケでコスプレイヤーさんたちの話を聞いて感じたのは、趣味を通じると年齢問わず友人ができやすいこと。そして、誰かと友人になることだけが、中年の孤独から抜け出す方法ではないということだった。

 コミケからの帰り道、戦利品を持って駅に向かう参加者の顔には充実した表情が浮かんでいた。その顔を横目に「もしかすると私に足りないのは、友達だけではなく、仕事以外に夢中になれる何かなのかもしれない」と考えていた。