テレビCMに現金プレゼントと、大手金融機関によるNISA口座獲得合戦が過熱しているように見える。だが、メガバンクの獲得目標は低く、野村證券も非公表で、本気度には疑問符がつく。

通りかかれば嫌でも目に入る、大がかりなNISAの広告。各社はキャンペーンには熱心だが、制度の理解が進んでいるかは微妙だ
Photo by Satoru Okada

「始めてみたら、なんだ、もっと早く始めればよかったと、いつも思う」──。野村證券が5月末から放映している、NISA(少額投資非課税制度)の口座開設を呼びかけるテレビCMだ。

 同様のCMは三菱東京UFJ銀行(BTMU)や三井住友銀行(SMBC)も放映している。

 NISAとは、元本ベースで100万円までの投資による譲渡益や配当が5年間は非課税となる制度。若年層を中心に個人投資家の裾野を広げるのが狙いだ。

 大手金融機関のキャンペーンは、広告展開にとどまらない。一定期間内に開設を申し込めば、手続きが完了した時点で合計2000円をプレゼントする大盤振る舞いで、申し込みで必要な住民票を、代行して取得するケースもある。

 さらに大手証券は、NISA以外でも知人を紹介して口座を開設させれば、3000円を渡すキャンペーンを併せて実施している。

 一度NISA口座を開けば、4年間は他の金融機関に口座を移せない。そこで、制度開始の来年1月まで、各金融機関の顧客獲得競争が続くといわれている。

 ただ、NISAの使い勝手の悪さを指摘する声は多い。

 例えば、銀行で一度口座を開設すれば、銀行が扱えない国内外の株やETF(上場投資信託)は5年間、NISA口座では買えない。「いくら説明を尽くしたところで、2、3年後に投資家から『どうして株が買えないんだ!』という苦情が来るのは目に見えている」(メガバンク関係者)。

 他にも、5年の間に金融商品を売却すればその枠で追加購入ができない、他の口座との損益通算ができないなど、欠点を挙げるときりがない。