これに対して電子書籍はどうでしょうか。たとえば電子辞書を使う時のことを考えてみますと、検索のスピードは速いし、持ち運びが楽だというメリットがあります。しかし、電子辞書の専用端末やスマートフォンでは、とても小さな画面でスクロールしなければならず、見落としが多くなります。

 さらに電子書籍では、自由に文字の拡大ができる分、文字と画面の位置関係が不定になりがちです。読む途中でフォントのサイズやデザインを変えると、ページ割りが大きく変わって、それまで読んだところの位置関係が分からなくなってしまいます。

 英語の本で、電子化の際にインデント(字下げ)がすべて取られた例を目にしたことがありますが、強烈な違和感を覚えました。段落の終わりが行の右端まで達している場合は、インデントや空白行がないと、次の行が新しい段落に変わったかどうか、まったく分からなくなります。電子化によって元の情報が欠落したり、劣化してしまう可能性を忘れてはいけないのです。

再読のための
「書き込み」のすすめ

 ここに200ページの紙の本があったとします。その一つひとつの見開きページをすべて「画面」だと考えてみると、その本には100の画面があることになります。

 紙の本であれば、この100の画面の切り替えはきわめて簡単です。自分の関心のある30ページと85ページを行き来しながら読む、ということも簡単にできますし、目次に戻ったり、索引に目を移したりするのも、ほんの一瞬でできるわけです。しかし、同じことを電子書籍でやるのは、リンクを張り巡らしたとしても大変です。

 また、紙の本には、自由に書き込みができます。アンダーラインを引いたり、余白にメモを書いたり、使い込んでいくうちにどんどん情報を蓄積していくことができるのです。たとえ十年前に読んだ本であっても、手にした途端に当時の自分の気持ちがありありとよみがえってきたりするわけです。