しかし、その論点を理解する上で、「何が主流な意見なのか」を知っておくことは大切です。「知識は広く持つほうがいい、という本が最近は売れている」「トランプ外交は悪、という主張のほうが主流」という風に、それが本当に正しいかどうかはともかく、多くの人がどちらが正しそうだと考えているのかを知ることで、その論点をより深く知ることができるようになるのです。
ベストセラーは「毒」か
「薬」のどちらかだ
また、「ベストセラー」にはもう1つ読むべき意味があります。それは、ベストセラーは必ず「議論を呼ぶ」ということです。
とある出版関連会社の社長に聞いた話ですが、「ベストセラー」は肯定的な評価ばかりでなく、批判的な評価を下されることも多いそうです。
たとえば、「ベストセラー」と呼ばれる本の中で、Amazonで星4・星5レビューばかりがつくものはとても少ないそうです。「ベストセラー」として名を残す本は、どれも星5レビューばかりでなく、星1・星2レビューもある程度つくことのほうが多いとのこと。
「毒にも薬にもならない」という言い方があります。益になるわけでも害になるわけでもなく、あってもなくてもどうでもいいものの例えです。
それで言うのであれば、ベストセラーというのは「毒か薬か」ではあるわけです。決して「ただの水」ではない。読んだ人の心に、肯定的な感情であれ否定的な感情であれ、危機感であれ嫌悪感であれ、何らかの感情を残す。「へえ、そうなんだー」と万人が思うものではなく、「そんなことはない!これは間違っている!」と一定の人数が思うものであることのほうが多い。ベストセラーとは、往々にして「議論を呼ぶ」本なわけです。
たとえば、増田寛也編著『地方消滅』は25万部を売り上げたベストセラーです。
この本は、「このままでは896の自治体が消滅してしまう!」とショッキングなデータを提示して、地域の消滅の可能性や地方創生の必要性を説く本だったわけですが、その後、この『地方消滅』を批判する本もたくさん出版されました。
「地方は消滅なんかしない!」と真っ向からこの本に対抗する本も少なからず出版されています。どの意見が正しいのかはわかりませんが、しかし1つ言えることは『地方消滅』は1つの議論を喚起した本だったということです。だからこそ多くの人に読まれるベストセラーになったのですし、また読む価値が生まれたわけです。
『東大読書』(西岡壱誠、新潮文庫)
本当に読むべき価値のない本というのは、誰にも何の感慨も残さない本です。誰もが知っている、誰が読んでも同意できる、誰もその本を否定しようとは思わない本こそ、読む意味のない本なのです。
「1+1は2だ」とだけ書かれた本を読んでも得られるものはありませんよね?それこそただの「水」です。それよりも、「実は1+1は2じゃなかったんです」と言われたほうが、「え、ホントに?」「そんなバカな」となって、読む価値が生まれるわけです。「薬」ではなく「毒」かもしれませんが、それでも「水」よりは読む意味があるわけです。
そしてベストセラーならば、どんな「議論」を喚起しているのかを調べることもできます。肯定的なレビューも否定的なレビューも含めて、ネット上には数多くのレビューがあるはずです。それを読めば、そのベストセラーが喚起している「議論」が何なのかも理解することができるのです。







