ネット銀行売却の「ねじれ」
最強SBIを脅かすドコモ

 これが楽天グループならば単純に親が楽天証券を使っていて、自然に楽天銀行も使っているとすれば、子どもの口座も楽天銀行に開設すればいいのです。

 ところがSBI証券の場合はねじれが生じてしまいました。これまでのSBI証券の利用者のメインバンクだった住信SBIネット銀行をドコモに売却してしまったのです。

 実際、私の家族はSBI証券をメインで利用しているのですが、その流れで今年7月段階では個人の預金もそれまでのメガバンクから残高の大半が住信SBIネット銀行に移行していました。それがこの8月から「ドコモSMTBネット銀行」に銀行名が変わったのです。

 つまりSBI証券を使っている親世代のメインの銀行口座がドコモSMTBネット銀行になってしまい、ポイント経済圏としてはdポイントがメインに移行するでしょう。そして最大の問題はドコモの連結子会社がマネックス証券になっていることです。これがねじれです。

 当然のことながらドコモの買収の狙いは、ドコモのdポイント経済圏の最大化です。これまで携帯他社と比較してドコモは出遅れていたのですが、dカード、マネックス証券に続き今回のネット銀行買収でようやく傘下の金融機関が出そろってきました。それを武器に国内最大の通信サービス利用者数を活用することで、遅れてきたにもかかわらず国内最強の金融グループへの名乗りを上げることができる体制が整ったのです。

 SBI証券にとって、こどもNISA獲得の入り口が証券口座開設なら問題ありません。しかし、親が子どもの銀行口座をドコモに開設してしまうと、その先にある証券会社はマネックス証券となります。これが21.3%の定期預金という異例な大盤振る舞い戦略の背景です。

 ドコモSMTBネット銀行はSBI証券との連携も継続しています。ただし、一つの銀行がSBI証券とマネックス証券の双方との連携を提供することになり、顧客が分散してしまうのです。

 実はSBI新生銀行はドコモSMTBネット銀行からの乗り換えを狙って、こどもNISA以外にも「最大5万2000円プレゼントのお引越しキャンペーン」や「最大1万6000円プレゼントのウェルカムプログラム」を展開しています。

 それだけお金がもらえるのであれば乗り換えるという読者も多いかもしれませんね。しかし実際はこれだけのお金で釣っても、なかなかメインバンク口座の乗り換えは行われません。

 というのも自分事として考えると、すでにドコモSMTBネット銀行の口座にクレジットカードの支払いや自動車ローンの引き落としが設定されているのです。そういった日常の支払いを含めてお引越しをする面倒さを考えると、仮に5万2000円をもらえるとしても本気で口座移管をする気にはなかなかなれません。

 当然ですが親のメインバンクがドコモSMTBネット銀行ならば、子どもの最初の銀行口座も同じ銀行に開設するのが親にとっては一番簡単な選択です。これがSBI証券がこどもNISAを制覇するための障害なのです。

 先述したように昭和世代の社会人は、野村など3大証券と3メガバンクを利用していました。それが平成世代でSBIと楽天が2大ネット金融機関として台頭したというのが日本の金融の歴史です。

 それが令和に入り、こどもNISAの孫世代が口座開設を始めるのにあたって、ひょっとすると4大携帯キャリアの金融機関へとさらに新しい動きがおきるかもしれません。そうなってしまうのか、その流れを引き戻せるのか?SBIグループにとっては、こどもNISA争奪戦が未来を占うひとつの試金石になるのかもしれません。

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