「自信をなくした人」に「頑張れ」より効くこと〈風、薫る第111回〉

虎太郎の絶望

 戊辰戦争の生き残りの屈折した中年男性と、夫を亡くしたシングルマザーが共に気晴らしを探そうと誓う。

 直美の再婚相手に平蔵がなったらどうしようと、へんな想像をしてしまった。

 一方りん。虎太郎(小林虎之介)が事務所を訪れる。

 戦場に行っていた虎太郎が帰国していた。でもなんだか元気がない。

「虎太郎が無事で本当によかった」とりんが言うと、「俺がいたのは戦線のずっと後方だったから」とうなだれたまま。

 からすの声に激しくびくつく虎太郎。

 こ、これは、朝ドラで時々描かれる戦争のPTSD?

 あまりにも過酷な状況に遭って、心が深く傷ついてしまうのだ。

「人の生き死にはくじ引きみたいなもんだ。
がんばったやつが報われるわけじゃない」

 あれだけ「頑張ったら報われる時代が来た」と張り切っていた虎太郎が、頑張っても報われない不条理にぶち当たった。正確にいえば、かつて、がんばっても報われない身分制度に苦しんだ彼が、それを打破したつもりだったが、結局、それは幻想だったことを突きつけられたのだ。

 かつて、りんがくれたハンカチーフを、虎太郎はずっと大切に持っていた。

 戦場でもお守りにして、戦地で知り合った兵隊にお守りになればと渡したが、その願いは叶わなかった。

 こういう場合、お守りを渡したほうが亡くなり、もらったほうが生き残るというような物語があるが、すべては時の運でしかない。

「わからなくなった。これからどうしようか」と迷子になった虎太郎に、りんはやさしく言葉をかける。

「虎太郎はあの頃とおんなじ。優しい虎太郎のまんま。おかえり虎太郎」

 自信をなくしている人には「頑張れ」と励ますより、その人の変わらない良さを伝えるほうが、心に届くこともあるのかもしれない。

 夕焼け。

 台所でハンカチーフを洗う。うっすらついた血のシミがとれない。

 このハンカチーフは、もともとは捨松(多部未華子)がりんにくれたものだ。

 りんが看護の仕事につくきっかけになったハンカチーフと言ってもいい。

 怪我した虎太郎の手にこのハンカチーフを巻いて手当てして、それを虎太郎がずっと持っていた。

 タイトルバックの映像にも、白いハンカチーフが描かれている。