転職、独立、結婚、引っ越し。大きな決断ほど、「自分は本当は何をしたいのか」と考えます。しかし、それでも答えが出ないことがあります。『頭のいい人が身につけている「決断力」』(イースト・プレス)の著者・深谷百合子さんが勧めるのは、「やりたいこと」ではなく、まず「嫌なこと」を書き出す方法です。

「やりたいこと」がわからなくてもいい。決断できる人が先に書き出すものPhoto: Adobe Stock

「迷っているなら、やればいいじゃん」が自分に返ってきた

 深谷百合子さんには、人生の中で大きく迷った決断がありました。

 中国企業への転職です。

 転職するかどうかを考えたとき、当然、いろいろな懸念が出てきます。そこで深谷さんは、自分が何に迷っているのかを紙に書き出しました。

「これは、本当に日本に帰らなければ解決できない問題なんだろうか」
「中国にいても、できる方法があるんじゃないか」

 一つずつ、自分に問い直していったそうです。

 そして、最後に背中を押したのが、意外な言葉でした。

「迷っているなら、やればいいじゃん」

 以前、自分が迷っている人にかけた言葉です。

 それがブーメランのように、自分に返ってきた。

 深谷さんは、その言葉で転職を決めました。

決断力とは「スパッと決める力」ではない

 私の「1分朝活」に来ていただいた深谷さん自身、以前は「決断力」というと、強く、迷わず、スパッと決められる力だと思っていたそうです。

 でも、自分の人生を振り返ってみると、実際にはそうではなかった。

 迷っている。悩んでいる。不安もある。

 その状態のまま、自分が何を大切にしたいのかを考えていた。

 つまり、決断力とは「迷わない力」ではありません。

 むしろ迷いから逃げずに、「自分は何を基準に選ぶのか」を確認する力なのです。

「やりたいこと」より先に「嫌なこと」を書く

「あなたが人生で大切にしていることは何ですか?」

 いきなりそう聞かれて、すぐ答えられる人は、それほど多くないでしょう。

 そこで深谷さんが勧めるのが、「嫌なこと」を書くことです。

 モヤモヤすること。やりたくないこと。腹が立つこと。

 たとえば、

「人に急かされるのが嫌だ」

 と感じるなら、自分は「自分のペース」や「納得して進めること」を大切にしているのかもしれない。

「意見を聞いてもらえないのが嫌だ」

 なら、「対話」や「尊重されること」が大切なのかもしれません。

 嫌なことの裏側には、自分が守りたい価値観があります。

「何が好きかわからない」人でも、「これは嫌だ」は意外とはっきりしている。その「嫌だ」を掘っていくと、自分の判断基準が見えてくるのです。

自分の「マイルール」を、はがき大の紙にする

 深谷さんは、自分の役割や大切にしたいことを「マイルール」として言葉にし、はがき大の紙に印刷して持ち歩いているそうです。

 迷ったら、それを見る。

 そして、

「そんな私は、この場面でどちらを選ぶのか」

 と問い直します。

 これも面白い方法だと思いました。

 決断のたびにゼロから「正解は何だろう」と考えるのではなく、自分が大切にしていることに戻る。すると、「世間ではこちらが正しい」「みんなはこちらを選んでいる」という外側の基準に引っ張られにくくなります。

迷ったら「未来の自分」に聞いてみる

 それでも決められないときには、「未来の自分」や「憧れている人」の頭を借りる方法もあるそうです。

「理想の自分だったら、どちらを選ぶだろう」
「あの人だったら、この状況をどう見るだろう」

 そう考えてみる。

 もちろん、その人と同じ選択をすればいいわけではありません。いまの自分の不安だけで考えている視点を、少し外側にずらすためです。

 決断するとき、私たちは「どちらが正しいか」を探します。

 でも、人生の大きな選択ほど、絶対的な正解などないことが多い。

 だから最後は、

「どちらを選ぶ自分でありたいか」

 に戻る。

 迷わないことより、迷ったときに戻れる自分の基準を持っていること。そのほうが、本当の意味での「決断力」に近いのだと思います。