では最後に、本日、ナレ死した美津を演じた水野美紀さんのコメントを紹介しよう。

―― 一ノ瀬美津のキャラクターはどのように作っていかれたのですか。

 美津は武家の女性なので、最初のキャラクター造形は所作指導の先生に学んだことが多かったです。手の置き方や食べ方、姿勢、風呂敷の包み方など、所作や礼儀を小さいころから指導されて出来上がっている人間なんですよね。

 口も大きく開けてはいけない。キリッと結んで、笑うときも袖で隠して笑う。ひとつひとつの所作を指導の先生に教わることで、キャラクターを作っていったので、喜怒哀楽を表現したい部分も所作の縛りのなかで演じることで美津という人に近づく。自分の生理とは異なる芝居の表現や感情の放出の仕方をするということは、今回が初めての経験でした。

――クランクインから一年近く美津を演じられていかがでしたか?

 こうやって長いこと携わると時間の流れを感じますね。りんが成長して孫までできて、さらに直美が家にやってきて、直美がまた赤ちゃんを産んでという……。安も子どもを産みましたしね。脈々と時代が変わって命が受け継がれていく感覚。そんな実感を持ちながら演じさせていただきました。

 東京パートになり思ったことは、美津はもともと好奇心旺盛で対応力のある人だったのだろうということ。時代の流れや価値観の変化などを察知する能力も高く、目の前のことを受け入れ柔軟に対応していける人。

 旦那さんが生きているときは旦那さんが“姫君扱い”をしてくれるので、そういられるようにしたいと思っていたでしょうし、もしかしたら、旦那さんの思いを汲(く)んでいたのかもしれないですよね。

 子どもたちに幸せになってほしいし、育て上げるのが生きがいということは芯としてあると思います。そのなかで、自分の娘・りんが新しい時代に自分とはまったく別の人生を歩もうとしていることを受け入れる許容量もあった。

 多分美津が現代に生まれていたら、たくましく働きながら子どもを育てるいいお母さんになれる人なんじゃないかと感じましたね。

 私も美津と同様で好奇心旺盛だし、適応力がある方だと思うので、同調する部分も多く、楽しく演じさせていただきました。

――これからのりんと直美にエールを送るとしたら?

 現代でも通じるような、女性だけで家を切り盛りしていく生活になってきているので、これから先も続くなら2人で力を合わせてたくましく生きていってほしいなと思います。この時代に、男性に頼らず女だけで生き抜くってすごいことだと思いますので。最後まで2人らしく生きる姿を見せてもらいたいなと願っています。もちろんいいお相手がいればそれはそれで迷わず進んでほしいです。

「この時代に、男性に頼らず女だけで生き抜くってすごいことだと思います」という言葉が印象的。一ノ瀬家は、りんのみならず美津も立派に女性だけで生き抜いた。

「口がうまい人」にだまされる人が決定的に見落としていること〈風、薫る第112回〉