戦死した夫が遺した軍服の「第2ボタン」…何度も取れていた理由が切なすぎる〈風、薫る第110回〉『風、薫る』第110回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第110回(2026年8月28日放送)「風、薫る」レビューです。

吾郎の最期

 赤ちゃんのじつにかわいい寝顔から始まる。朝ドラの赤ちゃんはいつもとびきりかわいい子がキャスティングされている。

 ところで、多江(生田絵梨花)は何のために一ノ瀬家へ?

「直美さんのご主人を私が看護させてもらいました」

 そうか、広島の病院に運ばれたと伝令の軍人が言っていた。第109回で多江が顔を見てハッとなった患者は、おそらく吾郎(甲斐翔真)であったのだろう。今日の主題歌は誰かをやさしく励ましている歌に聞こえた。

 吾郎が広島の軍病院に運ばれてきたとき、右足を骨折していたが、それ以前に脚気の症状があった。

 実はこの戦争は戦死者より伝染病や脚気で亡くなった人のほうが多かったという多江の話は印象深い。多くは語らないが、だからこそ看護婦の存在が大切だと感じる。看護とは命を大切にする行為だから。

 苦しいなか、それでも吾郎がずっと明るかったと多江。明るい入院をしていたわけだ。

 吾郎は多江に制服の第2ボタンを渡す。

「飯…つくれそうにない」「ああ…はあ〜…。怒られそうだ」「ピリっとして…優しくて…さみしがりのお母さんか…。ああ…会いたかったなぁ…。直美…」

 これらが吾郎の最期の言葉。

 たぶん、意識がもうろうとしていて、自分がいまどこにいて誰に向かって話しているのかわからなくなっているのだろう。でもこの正直な感情を、多江が広島の病院に行ったから、こんなにしっかり直美(上坂樹里)に伝えることができた。

「怒られそうだって。私のこと鬼みたいに」

 ちょっと怒ったように言う直美だが、涙があふれる。あっけない。あまりにあっけない吾郎の死。