「自分一人が動いても…」と思ったとき、グサッとくる言葉〈風、薫る第115回〉「きっと解決にはならない。けど、ほんの小さなことだとしても、いまやれることをやる」直美の言葉がグサっとくる

「いつまでたっても女の立つ瀬がないじゃない」

 ここでりんと直美がバディ感を発揮する。目配せすると、まず直美がセツに「ここで一緒に働きませんか?」「看護はできなくても何かここでできることを探して」とりんがたたみかける。

 だが左右からの連続攻撃にもセツは動じない。

「私にできることなんかないよ。今の仕事はきっぱりやめるから」

 セツ自身、仕事が長続きしないことを自覚している。

「字も読めなきゃ仕事も続かない。私はあなたたちとは違う」

 そのとき一部始終を聞いていたしのぶ(木越明)が大声で割って入ってくる。

「それは違うでしょ」

 これこそ昔ながらのしのぶである。

「りんさんだって直美さんだって私だって、何にもできないところから少しずつ血のにじむ思いで、やっと自分の道を選んできたのよ」

 正論だ。

「あなたのご事情なんてこれっぽっちも存じませんけどね。つらいご身分を盾にやさぐれて…」

 これは言い過ぎ。

 完膚なきまでにセツを叩きのめすか――と思ったら、「もったいない」ときた。

「どんな女でも生きてればいろいろある。けどそれをはねっ返さなきゃ。いつまでたっても女の立つ瀬が…ないじゃない」

 高慢なお嬢様育ちだからこそ、歯に衣着せない迫力で他者を誰彼構わずぶった斬る。それがしのぶ。昨日までの妙におとなしい物わかりのいいしのぶではない、こっちのしのぶほうがしっくりくる。

 しのぶの援護射撃に直美が再び説得を試みる。看護婦でなくてもいい。事務仕事など、ほかにも頼める仕事はある。とにかく、あのいい加減な看護会から出ることが肝要なのだ。

 直美の誘いにセツは心打たれた顔をしたものの、いったん、去る。あとには元・夕凪だった文(内田慈)の残した酒瓶(花瓶代わりになっている)が映っていて……。

 直美は諦めきれず、寛太にセツを自分のところで雇いたいと相談。

 寛太「セツだけ引っ張って何かが解決する?」
 直美「それ、あなたが言う?」
 寛太「まあな」

 この会話からすると、寛太はもしかしてセツと直美の関わりをもともと知っていて、助けたのかもしれない。いい加減な看護婦会だとはいえ、遊郭に逆戻りよりはマシだから。

 結局のところ、相変わらず、貧しい女性のセーフティネットがいまだに整備されていないことが問題なのだ。