誰かに悩みを打ち明けられると、つい「それはこういうことだよね」とまとめたり、アドバイスしたくなります。しかし、延べ5万人以上を診療してきた精神科医・さわ先生は、まず2分間、相手の話を遮らずに聞くといいます。『また話したくなる人がやっていること』(すばる舎)の著者が大切にする、「この人にはまた話したい」と思われる人の共通点とは。

5万人を診た精神科医が、相手の話を聞く「最初の2分間」にしないことPhoto: Adobe Stock

まず2分間、何も言わずに聞く

 精神科医のさわ先生には、診察で大切にしていることがあります。

 再診では時間の枠が決まっている。その限られた時間の中でも、

「最初の2分間は、相手の話を全力で聞く」

 ということです。

 相手が話している途中で、

「つまり、こういうことですね」

 とまとめたくなる。

「だったら、こうしたらいいですよ」

 と言いたくなる。

 でも、まず言わない。遮らない。

 私の「1分朝活」に来ていただいたさわ先生の話を聞いていて、これは診察だけの話ではないと思いました。

 普段の会話でも、私たちは「聞いているつもり」で、実は次に自分が何を言うかを考えています。

「また話したい人」は、相手を変えようとしない

 さわ先生が大切にしているのは、

「相手を変えようとしない」

 ということです。

 人は、いつも正しいことを言ってくれる人に会いたいわけではありません。

 むしろ、

「この人の前では、ちゃんとしなくていい」

 と思える人に、また会いたくなる。

「そのままのあなたで大丈夫」

 そんな姿勢で相手と向き合うことを、さわ先生は診察でも大事にしているそうです。

 ただ、それには一つ条件があります。

 自分自身にも、「そのままの自分で大丈夫」と思えていることです。

 自分に対して「もっとちゃんとしなきゃ」「もっといい人にならなきゃ」と要求し続けていると、いつの間にか相手にも「もっとこうしたほうがいい」と要求するようになる。

 自分を変えようとしすぎない。

 だから、相手のことも変えようとしなくなるのです。

格好よく見せるのをやめたら、人が助けてくれるようになった

 さわ先生自身、YouTubeなどで発信を始めた頃は、どこか自分を格好よく見せようとしていたそうです。

 ところが、自分の未熟なところや弱いところを見せるようになると、逆に共感してくれる人や、励ましてくれる人が増えていった。

「飾らない自分でも受け入れてくれる人と、これからの人生を歩んでいきたい」

 そう思うようになったと言います。

 弱さを見せれば、信頼を失う。

 そう考える人は多いと思います。

 でも、完璧ではない自分を見せることは、相手にとって、

「自分も完璧じゃなくていいんだ」

 と思える材料にもなるのでしょう。

「話したくないことは、話さなくていい」

 初対面の人に対して、さわ先生は、

「話したくないことは話さなくていい。話したくなったときに話してください」

 という姿勢を大切にしているそうです。

 人が話さないのには、その人なりの理由があります。

 過去に心を開いて傷ついたのかもしれない。

 まだ、自分でも言葉にできないのかもしれない。

 だから、無理に聞き出さない。

 これも、日常の会話では案外難しいことです。

 沈黙すると、「何か言わなきゃ」と焦る。相手が話してくれないと、「もっと心を開いてもらわなきゃ」と思う。

 でも、「わからないまま待つ」ことも、相手を尊重することなのだと思います。

「話さなくてもいい」と言える人に、人は話したくなる

 不思議なのですが、「話してください」と迫られると話したくなくなるのに、

「話さなくてもいいですよ」

 と言われると、話したくなることがあります。

 安心できるからです。

「また話したい」と思われる人は、話題が豊富な人でも、気の利いたアドバイスができる人でもない。

 相手を急いで理解しようとしない。

 相手を正しい方向へ連れていこうとしない。

 そして、わからないままでも、そこにいられる。

 まず2分、口を挟まずに聞いてみる。

 人間関係を変えるのは、何か気の利いたことを「言う」ことより、言いたくなったことを少しだけ「言わない」ことなのかもしれません。