CASE(3)「感情・意志の境界」「からだの境界」の混乱
会社にも家庭にも悩みを話せる相手がいない
僕が精神科のクリニックでカウンセリングをしていたとき、会社で人間関係がうまくいっていないという人たちがよく来院していました。会社の上司や同僚は全然気持ちをわかってくれないし、家に帰って家族に愚痴をいうと、「もうその話はやめてよ。聞きたくないわ」といわれてしまう。職場と家庭の両方で気持ちをわかってくれないと感じる経験をしたら、もうどん詰まりですよね。
でも、週1回のカウンセリングでは自分の話にうなずいてくれるし、的確に言葉で表現してくれる。職場と家庭では不信感しかもてないけれど、適切なカウンセリングでは「どうしてこんなにわかってくれるんだろう」と信頼が生まれやすくなります。
職場と家庭で味わう苦しさと、カウンセリングで得られる信頼感と安心感。これらを天秤にかけると、ある程度折り合って心の平衡状態を保てるというわけです。
これは、悩んだらカウンセリングを受けるという意味ではありません。安心・安全な第三の場所をつくって、そこで自分を落ち着かせるのが大事だということです。第三の場所といっても、仲のいい友人はおすすめしません。気を使わない間柄がゆえに、「俺も同じような状況だけどがんばってるんだから、お前もがんばれよ」などといった励まし方をされて、逆に傷ついてしまうこともありますから。
誰も自分を知らないサークルや市民の集まりのように、利害関係がなくて同じ目的のために集まっている場がよいでしょう。たとえば、好きな野球チームのユニフォームを着て試合を見にいったら、ホームランが飛び出して周囲のファンとハイタッチした……なんてことがありますよね。そうした安心・安全な第三の場所で、充実感や達成感を得ることが大切です。言い換えれば、「からだの境界」を会社以外の場所につくって、「感情・意志の境界」を保つということになります。
CASE(4)「からだの境界」「感情・意志の境界」「責任の境界」の混乱
夫が収入を盾にして横暴に振る舞う
家庭で収入の多いほうが、偉そうに振る舞うケースはよく見られます。僕自身も、配偶者のモラハラに悩む人から相談を受けたことは少なくありません。
こういうケースでは、一方から話を聞くだけでは解決につながらないので、なるべくご夫婦で来てもらうようにお願いしています。面談中にケンカが始まることもあるのですが、そういうときにどちらか一方が「あなたは働いていないんだから」「金を稼いでいるのは自分だから」と言い出すこともありますね。







