最強の武器「経済学」#2
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グーグル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム……。こうした巨大テック企業の間で今、経済学者や経済学の博士号保有者を巡る人材争奪戦が勃発している。その先導役はゲーム理論と行動経済学だ。特集『最強の武器「経済学」』(全13回)の#2では、世界のトップ企業がなぜ経済学をビジネスに生かそうとしているのか、最新事情を追った。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

世界有数のテック企業の間で行われる
エリート経済学者の熾烈な引き抜き合戦

 言わずと知れた世界の巨大テック企業、米GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)。あまりに存在感が大きいが故に米政府が目を付け、最近では解体論まで浮上してきた彼らだが、その強大なパワーの裏側に、経済学があることをご存じだろうか。

 何しろ、日本ではそうした動きは限られているのが現状だが、米国では経済学者がテック企業などに所属し、ビジネスに関与するのは決して珍しいことではない。例えばアマゾンは、グローバルで約200人に及ぶ経済学の博士号保有者を雇い入れているとされる。そして、「経営上の重要な意思決定を行うときには、ほぼ必ずといっていいほど経済学者の知見が生かされていた」と、最近までアマゾンに勤務していた元社員は驚きと共に振り返る。

 このほどダイヤモンド編集部の単独インタビューに応じた、米カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院のスティーブン・タデリス教授(詳細は本特集の#4『「日本企業に必須のゲーム理論」エッセンスを元アマゾンの経済学者が伝授』参照)もその一人だ。

 タデリス氏は2011~13年、世界最大のオークション(競売)サイトを運営する米イーベイのリサーチラボでエコノミストを務めた後、16~17年にはアマゾンで「経済学およびマーケットデザイン担当」のVP(ヴァイスプレジデント)の職に就いていた。同氏は「米国のテック企業の間では、経験豊富な一流経済学者の引き抜き合戦が熾烈だ。企業は学者が教授職の報酬として大学から受け取る金額の約2~5倍、時には10倍にも上る報酬を示して招き入れるようなケースが見られる」と、その苛烈な実態を明かす。

 企業側のニーズを先導しているのが、現代経済学においてアカデミックな面からも発展が目覚ましい、ゲーム理論と行動経済学の二大分野である。両分野が世界の経済学をけん引している様は、この四半世紀のノーベル経済学賞の受賞実績を見れば一目瞭然。今年もゲーム理論の応用分野である「オークション理論」を研究する2人の経済学者に授与されたように、二大分野の関連研究に受賞が集中しているのが分かるだろう。

 ではなぜ、テック系を中心とした世界のトップ企業の間で今、必死に経済学者を囲い込もうとする動きが広がっているのだろうか。