アクティビストの実像#1Photo:Maria Korneeva/gettyimages

2026年6月の株主総会は、アクティビスト(物言う株主)ら機関投資家の提案が過去最多の139議案に達した。その内容を分析すると、従来型の株主還元要求が減少傾向にある一方、経営トップや取締役の入れ替えを狙った選解任議案の割合が増えている。提案理由も個別事業の収益低下やM&Aの失敗など細部に及び、従来の手法が精緻化していることが分かる。新連載『アクティビストの実像』内の特別企画『総会事変』の上編で、アクティビストが取締役選解任を求める「3類型」とその攻勢の実態を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

シンクロ・フードで異例の取締役交代
還元強化だけでは防衛し切れない時代へ

「時価総額の約3割、企業価値の約4割に相当する『身の丈』に合っていないM&Aを実行した当社の経営判断は、外形上は『焦土作戦』と解釈されても仕方がない」

 2026年6月の定時株主総会において、飲食店向けプラットフォーム運営を手掛けるシンクロ・フードに対して突き付けられた株主提案は、敵対的買収から身を守るために自社の魅力をあえて低下させる焦土作戦になぞらえ、同社の迷走ぶりを皮肉交じりに批判する内容だった。

 提案を行ったのは、香港を拠点とする投資会社リム・アドバイザーズ。日本経済新聞社出身の松浦肇氏が日本株運用責任者を務め、これまでにも日産車体や平和不動産に対して関係会社からの「天下り」禁止を求めるなど、緻密な財務分析と強い交渉力で知られるアクティビスト(物言う株主)だ。

 同社株式の約13%を保有するリムが提案した社外取締役2人の選任案は、株主総会において過半数の賛成を得て可決された。会社側が提示した経営トップらの再任案が否決される一方、株主提案による役員選任案が通過するという異例の「役員逆転劇」が現実となった。

 株主が経営陣の退陣や役員交代を迫るプロキシーファイト(議決権争奪戦)自体は過去にも存在した。しかし現在の攻勢が過去と異なるのは、その「質」だ。

 単なる経営権獲得目的や過激な対立ではなく、個別事業のROA(総資産利益率)低下やM&Aに伴う減損処理といった精緻な財務データを武器に、議決権行使助言会社や他の株主を論理的に巻き込んで支持を広げている点にある。シンクロ・フードで起きた可決劇は、特定の1社で起きた珍事ではなく、あらゆる上場企業が直面し得る地殻変動を象徴している。

 全社の業績が表面的には黒字であっても、不採算事業の放置、M&Aの失敗、あるいはガバナンスの形骸化が存在する場合、アクティビストは個別事業の細部を厳しく追及し、経営トップの首を狙いに来る時代が到来している。

 次ページで、シンクロ・フードで起きた役員交代劇の真相、そしてKADOKAWA、京セラ、ワコムなど名指しされた大手企業を揺さぶったアクティビストの攻撃パターン「3類型」と最新勝敗データを明らかにする。