株主総会2026#3

日産自動車、日本製鉄、そしてみずほフィナンシャルグループ。日本を代表する名だたる巨大企業が、わずかな株式しか持たないアクティビスト(物言う株主)の標的になっている。彼らが大企業の「資本の論理」に対抗すべく、武器とするのは「ガバナンスの正論」だ。連載『株主総会2026』の本稿で、会社法が定める「300個」の権利を起点に大企業を追い詰めるアクティビストの巧妙な手法と、各社の攻防の深層をひもとく。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「300個の脅威」を最大の武器に
洗練された現代アクティビスト戦略

 アクティビスト(物言う株主)のターゲットは、今や中堅企業にとどまらない。巨大企業に対してわずかな議決権しか持たないファンドが、経営トップの脅威となりつつある。彼らが駆使するのは、資金力による力技ではなく、会社法の「300個の議決権」という入場券を使って機関投資家を味方に付ける戦略だ。

 中でも注目は、ストラテジックキャピタル(SC)が展開する二正面作戦だろう。

 SCは時価総額が巨額な親会社(象)に対しては、会社法上の株主提案要件を満たすわずかな株式を取得して親会社側のガバナンス責任を直接追及する。その一方、本丸である子会社の株式は市場で大量に買い占めて高い発言権を確保する。この「親会社にはわずか、子会社には大量保有」という二面戦略によって、グループ全体の逃げ道を内と外からふさぐ戦略だ。

 わずかな株式保有で象を揺さぶることを可能にしているのが、国内外の機関投資家や米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)などの議決権行使助言会社における「基準の厳格化」だ。

 近年、投資家たちは「長期的なPBR(株価純資産倍率)1倍割れ」や「親子上場による利益相反リスク」を放置する企業の経営トップに対し、取締役選任案などに反対票を投じる厳しい行使基準を相次いで導入している。

 SCが突き付ける要求は、東京証券取引所の市場改革やコーポレートガバナンス・コードの理念に忠実な「正論」で組み立てられる。そのため、数十パーセントの株式を握る保守的な機関投資家であっても、SCの指摘に耳を傾け、会社側へ「ノー」を突き付けざるを得ない構造が生まれている。つまり、わずかな議決権は、巨大な機関投資家を味方に付けて経営陣を追い詰める「起爆剤」として機能しているのだ。

 300個の議決権をテコに、巨大企業へ牙をむくアクティビスト。日産自動車、日本製鉄、そしてみずほフィナンシャルグループ(FG)――。子会社を「単なる工場」やポストとして扱い、方針なき親子上場を放置する大企業のガバナンス不全に対し、市場が下す冷徹な審判の全貌を次ページで明らかにする。