自動車 “最強産業”の死闘#28Photo:JIJI

トヨタ自動車などのトヨタ自動車グループによる豊田自動織機への株式公開買い付け(TOB)が佳境を迎えている。トヨタ自動車グループは1月中旬にTOB価格を引き上げたが、アクティビスト(物言う株主)の米エリオット・インベストメント・マネジメントなどがTOB価格は不十分として徹底抗戦の姿勢を見せている。ところが、エリオットをはじめとする複数のファンドが、昨年のTOB観測報道後の株価急騰時に豊田自動織機株を大量に取得していたことがダイヤモンド編集部の取材で判明した。長期連載『自動車 “最強産業”の死闘』の本稿では、「さや抜き」狙いとみられる主要ファンドの顔触れに加え、その“巧妙な手口”を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)

日本企業によるTOBで過去最大案件
エリオットをはじめ複数のファンドが参戦

 トヨタ自動車などのトヨタ自動車グループによる豊田自動織機に対する株式公開買い付け(TOB)が、2月12日の期限に向けて佳境を迎えている。トヨタ自動車グループは2025年6月にTOB計画を公表していたが、1月中旬にTOB価格を1株当たり1万8800円と、当初より15%引き上げた。計画公表時より株価が上昇していることなどを反映した。

 TOB成立の条件は、発行済み株式の42.0%取得。25年9月末時点で24.6%を保有するトヨタ自動車はTOBには応募せず、TOB成立後に保有する株式を豊田自動織機に売却する方針だ。トヨタ自動車グループでは、合計17.6%を保有するトヨタ不動産、デンソー、アイシン、豊田通商の4社がTOBに賛同を表明している。ただ、それらを合算しても成立ラインには届かず、残る24.4%を他の株主から買い付ける必要がある。

 TOB成立を左右する存在として注目されているのが、26年1月時点で6.65%を保有するアクティビスト(物言う株主)の米エリオット・インベストメント・マネジメントだ。エリオットは、引き上げ後のTOB価格についても「過小評価だ」として応募せず、他の株主にも応募しないよう呼び掛けている。

 エリオットは豊田自動織機が保有する上場企業の株式の価値上昇を踏まえれば、同社の価値は1株当たり2万6000円超と主張する。1月下旬には豊田自動織機に対する対抗TOBも視野に入れていると報じられた。TOB価格を巡ってトヨタ自動車グループとアクティビストが対立する構図といえる。

 トヨタ自動車などのトヨタ自動車グループは2月2日、「TOB価格を変更する意向はない」と表明。1万8800円のTOB価格は豊田自動織機の本源的価値を反映した最善の水準であると改めて強調した。

 今回のTOBは25年6月の正式発表前に市場に織り込まれ、豊田自動織機の株価は大きく上昇していた。米ブルームバーグや「日本経済新聞」は正式発表の約1カ月前に非公開化計画を報道。買収総額は6兆円規模とされ、1万3000円前後だった豊田自動織機の株価は正式発表前に1万8400円前後に上昇していた。

 実は、エリオットはこのTOB報道による株価の動きをきっかけに「さや抜き」を狙って参戦したとみられている。実際、大量保有報告書によれば、エリオットの保有比率が5%を超えたのは25年12月に入ってからだ。買い増しているのはエリオットだけではない。日本企業によるM&Aで過去最大となるこの超大型ディールには、複数のファンドが群がっている。

 今回、ダイヤモンド編集部の取材で、TOB計画の発表前と発表後の主要ファンドの豊田自動織機株の保有比率が判明した。TOB報道後に持ち株を増やしたファンドとは。一方、発表後に“撤退”した著名アクティビストもいた。次ページでは、エリオット以外に豊田自動織機株を保有する主要ファンドの実名や保有比率に加え、その巧妙な手口も明らかにする。