「部下の話を親身に聞けない」「つい冷たい対応をしてしまう」……。そんな悩みは、スキルではなく自身の「心の余白不足」が原因かもしれません。実はコミュニケーションは膨大なエネルギーを消費する活動です。疲弊した状態で無理に向き合っても関係を損ねるだけ。『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』をベースに、部下と良好な関係を築くためにまず行うべき「自分を整える習慣」の重要性を紐解きます。

【部下の話を聞けない本当の理由】対話の前に自分を整える方法・ベスト3Photo: Adobe Stock

部下の話を聞けない本当の理由

「部下の話をじっくり聞いてあげたいのに、どうしても集中できない」
「親身になろうとしても、どこか冷たい対応になってしまう」

このように、対人関係で思うような振る舞いができず、自己嫌悪に陥った経験はないでしょうか?

実は、上手な対話ができない原因は「コミュニケーション能力の欠如」ではなく、あなた自身の「心の余白不足」にあるのかもしれません。

コミュニケーションは「エネルギーの消費活動」

人間関係を円滑にするテクニックを学ぶ前に、私たちが理解しておくべき重要な前提があります。

まず大切になるのは、「心身のウォーミングアップ」です。コミュニケーションは、想像以上にエネルギーを使います。キャッチボールのように相手とやりとりするうちに、こちらの心身も疲れてくるものです。
――『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』より

会話とは、単に言葉を交わす作業ではありません。相手の感情を読み取り、適切な言葉を選び、リアクションを返すという、脳のメモリを大量に消費する高度な知的作業です。

したがって、疲弊した状態ではパフォーマンスが落ちて当然なのです。

「自分がクタクタ」な状態で寄り添うのは不可能

心のバッテリーが残量ゼロに近いとき、周囲に優しく接することは誰にとっても不可能です。

たとえば、仕事のトラブルで心も体もクタクタなときに、友人から転職の相談を持ちかけられたら、話を聞けるでしょうか。あるいは、パートナーの愚痴に付き合える余裕があるでしょうか。部下の話に寄り添う気持ちになれるでしょうか。きっと難しいはずです。
――『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』より

余裕がないときに無理をして対話に挑むと、集中力が途切れて相手に不快感を与えたり、些細なことでイライラして良好な関係を壊してしまったりするリスクが高まります。

相手を大切に思うからこそ、不完全なコンディションで向き合うのは避けるべきなのです。

相手に向き合う前に「自分をニュートラルに戻す」

では、良好なコミュニケーションを維持するために、私たちはどう行動すればよいのでしょうか?

だからこそ、まずは相手のことよりも先に自分自身の状態を「疲れていない、ニュートラルなモード」に整えること。エネルギーのチャージが必要なのです。
――『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』より

他者の支援や対話に向かう前に、まず自らの状態を「整える」プロセスを挟みましょう。具体的には以下の3つのステップが効果的です。

状態の自己観察:今の自分の疲労度やストレス状態を客観的にチェックする
短時間のリセット:重要な会話の直前には、深呼吸をする、温かい飲み物を飲むなどして心をニュートラルに戻す
 時にはあえてリスケジューリングする:本当に余裕がないときは「今はしっかり話を聞ける状態ではないので、後ほど改めて時間を作らせてほしい」と正直に伝え、万全の状態で向き合う

相手に優しくありたいなら、まず自分自身を整え、エネルギーを満たすこと。これが、周囲から信頼されるリーダーが実践している対人スキルの本質です。