世の中をあっと言わせる偉業を成し遂げた人は、どんなことを考えていたのか。サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本映画史上初のグランプリを受賞し、『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』を上梓した長久允氏の思考を辿ります。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本質問Photo: Adobe Stock

 仕事に悩む人に向けて、「好きなことをやればいい」というアドバイスはよく聞きます。

 ただ、そうは言っても難しいものです。

 仕事である以上、相手がいて、お金が動く。生活もかかっている。

 だから私たちは、つい「好きなこと」よりも「求められていそうなこと」を優先するようになっていきます。

狙って出せるところに大きな結果はない

 けれど、それを続けすぎると、仕事に身が入らなくなることもあります。

 映画監督/脚本家の長久允(ながひさ・まこと)さんは、会社員として10年間、広告の仕事をしていました。

 その後、「人生で一度でいいから、『自分が本当に良いと思うかどうかのみを考えた映画』を作りたい」と一念発起し、サンダンス映画祭で世界一を獲ります。

 そんな長久さんは、「ビジネスになるかどうか」について、こう語っています。

 ビジネスになっているかどうかは問題ではありません。自分を信じて書いていたら勝手にそのうちビジネスになるから安心していい。むしろ、作家性が確立し、たまにある作り手サイドの労力と魂を軽視した「しょうもないタイプのコンテンツビジネス」の歯車にならずに済むでしょう。

――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p11より

 これは、長久さんが広告の世界でも活躍しながら、映画監督としても第一線で活動していることを踏まえると、リアリティが増します。

 すでに需要がありそうな形、説明しやすい企画、上司やクライアントが安心しそうな言葉。そうしたものを積み上げれば、失敗しにくい仕事にはなるかもしれません。

 けれど、「『それっぽさ』から遠く離れた」ところに行ったとき、結果が出たと長久さんの経験が教えてくれます。

笑う奴が間違ってる

 長久さんは、こうも言います。

 誰かの冷笑は無視をしましょう。そいつはセンスがない、ただの意地悪です。
 やりたいことをやるべきなのです。『恥』は捨てる。丸裸になったらいいのです。笑う奴が間違ってる。

――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p229より

 好きなことを仕事にするうえで難しいのは、それをさらけ出すことによる周囲の反応かもしれません。

 ばかにされないか、幼いと思われないか、奇抜だと思われないか。

 そんな恐れから自分の好きなことを隠そうとしたとき、「笑う奴が間違ってる」と言い切ってくれる大人がいることで、勇気がわきます。

「生き方」で勝負する

 さらに、脚本家や映画監督という「仕事」について、こうも語っています。

 脚本家や映画監督は、もしかしたら「職業」ではなく、「生き方」に近いように思うのです。

――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p10より

 小手先ではなく、「それっぽさ」を狙わず、自分自身で勝負する。

 既製品のコピーは量産できてしまう今だからこそ、そんな姿勢が評価されるのかもしれません。