健康のために筋トレが重要だという認識は、いまや広く浸透している。しかし、ただ筋トレをすれば、それだけで十分な効果が得られるわけではない。医師で老年医学の専門家であるガブリエル・ライオン博士は、著書『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』で、筋トレの効果を大きく左右する重要なポイントを指摘している。時間をかけて取り組んでいるのに、なかなか成果につながらないのはなぜなのか。その理由を見ていこう。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)

頭の悪い人がきまってやっている「ダメな筋トレ」ワースト1Photo: Adobe Stock

「筋トレ」はすればいいというものではない

 ジムに通い続けているのに、一向に筋トレの成果が出ない人がいる。問題は、ただ筋トレを「やっているだけ」で満足してしまい、そのやり方に目を向けていないことにある。

 形だけの努力に満足し、結果を出せない人は、「負荷が不十分な、楽なトレーニング」に終始している。

 筋肉を成長させ、体組成を根本から書き換えるためには、肉体に一定以上の生理的なストレスを与える必要がある。医師で老年医学の専門家であるガブリエル・ライオン博士は著書『筋肉が全て』の中で、適切な負荷とメカニズムの重要性をこのように明示している。

 筋力トレーニングは、ブドウ糖や脂肪酸などを吸収する代謝の受け皿としての筋肉を増やすだけでなく、一度減らした脂肪がふたたび増えるリバウンドを防ぐのにも役立つ。
 筋力トレーニングの負荷を強めることは、体組成を改善する効果的な手段だ。トレーニングの改善効果がなかなか表れない場合には特に有効と言える。
 筋肉組織の代謝は非常に速いので、継続的なトレーニングが欠かせない。
 簡単にいえば、筋力トレーニングで筋肉を壊し、タンパク質でそれを修復する。タンパク質が筋タンパク質合成によって筋肉を構築するのだ。それで筋力が高まり、筋肉が引き締まる。(中略)健康な筋肉は生涯にわたって体組成を決定づける重要な要因だ。――『筋肉が全て』より

 息一つ上がらないような楽なトレーニングを漫然と続けているだけでは、筋肉に十分な刺激を与えることはできない。筋肉を成長させるには、ある程度の負荷をかけ、筋肉が「これまで以上の力を出さなければならない」状況をつくる必要がある。

 つまり、筋肉に十分な刺激を与えない筋トレは、時間とエネルギーを費やしているわりに、期待するほどの効果を得られない「不毛な作業」になりかねない。

「楽な方法」なんてない

 この失敗の背景にあるのは、人間の防衛本能が求める安易さへの逃避である。私たちは無意識に身体の疲労を避け、自分がコントロールできる快適な範囲にとどまろうとする。しかし、その選択こそが望む成果から自分を最も遠ざける。

 どこかに「楽な方法」があるなどというのは、自分を甘やかす幻想にすぎない。
 楽な道を選んだら人生は困難になる。
 反対に、困難な道を選べば人生は楽になるのだ。――同書より

 一時的な肉体的苦痛を伴う「困難な道(適切な高負荷)」を選択することは、長期的には強固な代謝能力と引き締まった身体という、快適な人生をもたらす。

 一方で、辛さを避けて「楽な道(不十分な負荷)」を歩み続ける人は、どれだけ時間を投資しても身体が変わらず、最終的には代謝の低下や肥満という困難な現実に直面する。

 ただ身体を動かすのではなく、科学的な原則に従って肉体に適切な負荷を課す。その能動的で知的な姿勢こそが、肉体のパフォーマンス、ひいては人生の質を決定づけていくのだ。