親が立派すぎると子どもはどうなる?「すご親」が生む意外な苦しさ〈風、薫る第120回〉『風、薫る』第120回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第120回(2026年9月11日放送)「風、薫る」レビューです(ライター 木俣 冬)

お母さんが立派すぎたとき、娘はどうする?

 主題歌始まりで、タイトルバックを見ながら思う。タイトルバックが絵だったのは、やがて環(瀧七海)が絵を描くことになる暗示だったのだろうか。

 今日は母と娘の進路面談。環が雑記帳をりん(見上愛)に渡す。そっとめくるりん。明るいほうに向き直って絵を見る。芸が細かい。りんが微笑むのを見て環は切り出す。

「お母さん。私、絵を描きたい。絵を描いて生きていきたい」

 ついに決心がついた環。それまでは、まだ自分がどうなりたいのか漠然としていた。看護婦の仕事に興味を持ったのも、嘘ではなかった。でもりんが働いてるの見て、思い知った。

「私はお母さんみたいにはなれない」

 せっかく女学校に入れてくれたのにごめんなさいと深く頭を下げる環。りんが自分を看護婦にしたくて女学校に入れたわけじゃないこともわかっている。

「でもお母さんが立派すぎて。どうしたらお母さんに喜んでもらえるんだろうって考えちゃって…苦しかった。がっかりさせたくないから…」

 お母さんが立派すぎて。女手ひとつで娘を育てあげ、女学校にも通わせた経済力。その原資は看護の手腕である。見学して、りんのその看護婦としての能力の高さを思い知った環は自分には同じことはできないと感じた。

 立派な母親を持つことが、子どもにとってプレッシャーになることもある。毒親ならぬ「すご親」のしんどさ、とでも言おうか。

 女性の自立が重要視されている時代に活躍した女性の娘世代といえば、ふと連想するのは、1986年の男女雇用機会均等法施行以降、仕事を続けてきた女性たちと、その娘世代だ。母親がまだ現役でバリバリ働いている人も多いはず。姉妹母娘みたいに仲の良い関係もあるだろうし、お母さんが立派すぎて引け目を感じてしまう人もいるだろう。

 お母さんが立派すぎた場合、環のように母親と同じ道を歩く必要はないと気づくこともプレッシャーから抜け出す第一歩なのかもしれない。