資格や語学の勉強をしようと思っているのに、家にいるとついダラダラしてしまう。図書館やカフェなら集中できるのに、なぜ家では勉強が進まないのでしょうか。500万DLを突破したアプリ「集中」の開発者で、『脱スマホ術』の著者・戸田大介さんは、その理由の一つに「緊張感」があると言います。家でも勉強に集中するためには、どうすればいいのでしょうか。戸田さんに聞きました。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「カフェでは集中できるのに、家だとダラダラする人」が見落としていることPhoto: Adobe Stock

家でダラダラするときに足りない「緊張感」

――図書館やカフェなら集中できるのに、家だとなぜか勉強が進みません。なぜなのでしょうか?

戸田大介(以下、戸田):一つの大きな理由は、家では「緊張感」が生まれにくいことです。

 たとえば、図書館に行くと、周りの人が静かに勉強していますよね。そういう場所には独特の緊張感があって、自分も自然と勉強する気持ちになりやすい。

 一方で、家は基本的にリラックスする場所です。ソファに座ったり、ベッドに寝転がったりしていると、どうしても緊張感はなくなります。

 人の状態には、「緊張モード」「リラックスモード」があります。人間は、安全な状況だと感じると「リラックスモード」になって、脳や身体を休ませようとします。心拍がおだやかになりますし、脳も活動を抑えようとします。

 リラックスモードもとても重要な役割がありますが、勉強や仕事をするときには逆効果になります。頭では「勉強しなければ」と思っていても、なかなか行動に移せないんです。逆に、危機が迫っていると感じると「緊張モード」になり、行動を起こしやすくなります。

 だから、家でダラダラしてしまうときに、「もっとやる気を出さなければ」と考えるだけでは、なかなかうまくいきません。必要なのは、適度な緊張感をつくって、自分を「行動しやすい状態」にすることです。

人は「意志」より「目の前の状況」に動かされる

――でも、家にいながら「緊張モード」に切り替えるのは難しくないでしょうか。

戸田:そこで大切なのが、無理に自分を奮い立たせようとするのではなく、「目の前の状況を変える」という考え方です。

 私たちは、自分の意志で行動を決めているように思っていますが、実際には「目の前の状況」にかなり強く影響されています。

 たとえば、目の前においしそうなケーキがあれば食べたくなる。怖い人がいたら逃げようとする。スマホが手元にあれば、つい触ってしまう。人は、理性的に考えて行動するよりも、まず目の前の状況に反応します。

――ということは、「勉強するぞ」と意志を強く持ったり、目標を掲げたりするよりも、目の前の状況を変えたほうがいいということですか?

戸田:そうです。たとえば、「今日はスマホを見ずに勉強する」と決めても、目の前にスマホがあって、すぐにSNSや動画アプリを開ける状況がそのままなら、どうしてもそちらに反応してしまいます。

 だから、「勉強しなければ」と気合いを入れるのではなく、自然と勉強に向かいやすい状況をつくることが大切です。

――状況が変わるだけで、そんなに行動は変わるのでしょうか。

戸田:わかりやすいのが、夏休み最終日の宿題です。

 子どもの頃、夏休みの前半には宿題を先延ばしにしていたのに、最終日になると、ものすごい集中力で宿題を片付けたことがありませんか。

 性格や意志の強さが、最終日になって突然変わったわけではありません。変わったのは、目の前の状況です。「まだ時間がある」から「もう時間がない」へと変わったのです。

 締め切りによって緊張感が生まれ、「緊張モード」に切り替わった。その結果、勉強に向かいやすくなったわけです。

タイマーで「架空の締め切り」をつくる

――資格や語学など、自分で進める勉強には明確な締め切りがないこともあります。そんなときは、どうすればいいのでしょうか。

戸田:そうなんです。資格や語学の勉強には締め切りがないことも多いので、「まだ時間がある」という状況になりやすいんです。そこで簡単にできるのが、タイマーを使って「架空の締め切り」をつくることです。

 勉強を始めるときに、10分のタイマーをスタートさせます。「10:00」だった表示が、「9:59」「9:58」「9:57」……と減っていく。目の前で残り時間がどんどん減っていくと、「時間がない」という状況をつくることができます。

――でも、自分で設定した「架空の締め切り」ですよね。それでも緊張感は生まれるのでしょうか?

戸田:その感覚は、とてもよくわかります。しかし意外なことに、それでも実際には緊張感が生まれます。私たちの脳は、架空のものと現実のものを区別することが苦手だからです。

 たとえば、ホラー映画を観ているときのことを考えてみてください。画面にゾンビが出てきても、「これは映画だから、本当に襲われることはない」と頭ではわかっていますよね。それでも、突然ゾンビが現れれば「うわっ!」と驚きます。瞳孔が開いたり、冷や汗をかいたりと、身体も反応します。

 つまり、架空のものであっても、人間の心や身体は影響を受けるんです。タイマーも同じで、本当の締め切りではなくても、目の前で「9:59」「9:58」と時間が減っていくと、それまでなかった緊張感が生まれます。

「まだ時間がある」という状況から、「時間がどんどん減っている」という状況に変えるわけです。

 慣れてきたら、自分が集中しやすい時間に合わせて調整してもいいでしょう。たとえば25分勉強して短い休憩をとり、また25分のタイマーをセットする。そうすると、そのたびに新しい「小さな締め切り」ができます。

「勉強しなければ」と思っているのに、どうしてもダラダラしてしまう。そんなときは、タイマーを押して「架空の締め切り」をつくってみてください。すると人は夏休み最終日のように、「本能的に」動き出そうとするようになります。