日産の元会長カルロス・ゴーン氏の記者会見=2020年01月08日、レバノン Photo:時事通信フォト
かつて経営危機だった日産自動車をV字回復させたカルロス・ゴーン氏。「カリスマ経営者」「尊敬すべきビジネスリーダー」として称賛されたが、金融商品取引法違反などの容疑で計4度逮捕されたのち国外に逃亡、今もなお、事件の不透明な部分は残されたままだ。彼は、なぜ暗躍と私腹の肥やしに手を染めたのか。そして、巧妙に隠蔽された不正はどのように暴かれたのか。当時の社長を務めていた西川廣人氏が極秘裏に行われた工作と、世間を欺き続けた彼の二面性と動機の真相に迫る。
※本稿は、西川廣人『わたしと日産 巨大自動車産業の光と影』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
不正行為の実態
→『ゴーン逮捕直前の最後の会談「サイカワサン、あなたは不賛成なんだな」日産元社長が回顧する、ルノー統合拒否の舞台裏』を読む
カルロス・ゴーンはどんな不正を犯したのか。いわゆる「ゴーン事件」の概要をまとめておきたい。
東京地検特捜部は2018年11月19日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑でゴーンを逮捕した。2015年3月期までの5年間の報酬を実際より約50億円も少なく見せていたという疑いだ。この時点でゴーンは日産自動車の代表取締役会長、ルノーの取締役会長兼最高経営責任者(CEO)、三菱自動車の取締役会長を兼務していた。
特捜部は同日、同容疑に関与したとして、日産の代表取締役だったグレッグ・ケリーも逮捕している。
日産は同年11月22日に臨時取締役会を開き、ゴーンの会長職と代表取締役の解任を全会一致で決議し、ケリーの代表取締役解任も同時に決めた。2人は代表権のない取締役になった。
当時の取締役会のメンバーを挙げておく。
カルロス・ゴーン代表取締役会長(後に解任)、西川廣人代表取締役社長兼CEO、グレッグ・ケリー代表取締役(後に解任)、坂本秀行取締役副社長、志賀俊之取締役(前COO)、ジャン=バプティステ・ドゥザン社外取締役(ルノー出身)、ベルナール・レイ取締役(ルノー出身)、井原慶子社外取締役(レーサー、実業家)、豊田正和社外取締役(経済産業省出身)。
特捜部は同年12月10日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪でゴーンとケリーを起訴し、さらに直近の3年間も過少記載があったとの容疑で2人を再逮捕した。過少記載は8年間で約91億円に上った。
さらに特捜部は同年12月21日、ゴーンを会社法違反(特別背任)の容疑で再逮捕する。ゴーンが個人的に所有する金融商品の損失を一時的に日産に付け替えたほか、信用保証に協力したサウジアラビアの実業家に日産の資金を送金した疑いだ。







