「急に予定が変わるとイライラする」――感情のコントロールが難しくなることは、性格の問題だと思われがちだ。だがじつは、認知機能の低下によって起こっている場合もあるという。元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏の著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』をもとに解説する。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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「急な予定変更」にイライラしていませんか?
休日の昼前。
家族で出かける約束をしていた。
ところが、子どもが「家にいたい」と言い始める。
「今日はやめようか」
妻がそう言った瞬間、思わず声を荒らげてしまった。
「なんでいまさら?」
「せっかく予定を空けたのに」
「また振り回されるのか」
言い終わったあと、部屋の空気が凍りつく。
妻も子どもも黙ったまま。
自分でも、「そこまで怒ることじゃなかった」とわかっている。
昔なら、「じゃあまた今度にしよう」で済ませていた。
なのに最近は、予定変更やちょっとしたトラブルがあるだけで、どうしてもイライラを抑えられない……。
「対応力の低下」は認知機能低下のサインかもしれない
「年を取ると短気になるものだ」
そう思って片づけている人もいるかもしれない。
しかし、その変化は、単なる性格の問題ではない可能性がある。
元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏は、著書『糖毒脳』で、認知機能低下のサインとして、感情のコントロールにも変化が現れることがあると指摘している。
脳の老化の前兆は「物忘れ」だと思われがちだ。
しかし実際には、
怒りっぽくなる。
予定変更に対応できなくなる。
新しいことを受け入れられなくなる。
こうした変化が、物忘れより先に現れることも少なくない。
本人は「最近イライラしやすくなっただけ」と感じていても、家族や友人は「なんだか人が変わってしまった」と受け止める。
そして感情をコントロールできなくなることで、人間関係に少しずつひびが入り、人が離れていってしまうこともある。
こういった認知機能低下のサインを放置していると、将来的に「人が離れていってしまう」という状態に陥りかねないのだ。
認知機能低下を防ぐ鍵は「糖」だった
では、なぜ脳の働きが変わってしまうのか。
下村氏は、その背景にある大きな要因として「糖」を挙げている。
過剰な糖の摂取を長年積み重ねた結果として発症するのが「糖尿病」ですが、じつは糖尿病の人は、アルツハイマー病になりやすいのです。
米国ミネソタ州南東部の地域住民を対象とした大規模研究では、アルツハイマー病患者の81%が2型糖尿病、または糖尿病予備群であったと報告されています。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
糖を摂りすぎる生活が続くと、血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌される。
じつはインスリンは、脳神経細胞同士の情報伝達を助けたり、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβから脳を守ったりする重要な役割も担っている。
ところが糖を摂りすぎる生活が続くと、インスリンは効きにくくなり、その働きも乱れてしまう。
「最近、前より怒りっぽくなった気がする」
もしそんな変化を感じているなら、性格の問題だと決めつける前に、毎日の食生活を見直してみる価値はあるのかもしれない。
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








