では、なぜリッツカールトン側はこんなことを口走ってしまったのか。メディアからの問い合わせで舞い上がってしまったということもあろうが、報道対策アドバイザーとして、これまで多くの企業の謝罪文や広報コメントの添削をしてきた立場で言わせていただくと、板野さんを守る意識よりも「自己保身」が勝ったことが大きいのではないか。

 人は後ろめたいとき、不安なときにこそ「多弁」になって失敗する。言わなくていいことを口にして炎上するのだ。

 板野さんの脱衣所動画が大炎上しているのを見て、こっちにも延焼してくることに恐怖して「私たちは脱衣所撮影には無関係です」ということをアピールしたいあまり、板野さんを後ろから刺し、自分たちの首を絞めるような「悪手」に出てしまったのではないか。

 いずれにせよ、「宿泊者の安全やプライバシー守る」ことが叩き込まれているホテル業界にあって、違法なことや迷惑行為をしたわけでもない個人宿泊者に対して、ここまでわかりやすくハシゴを外すようなことをするというのはかなり異例のことだ。

 ただ、これまで述べた2つのポイントは、実はそれほど大した問題ではない。筆者がリッツカールトン日光の対応に驚愕したのは3の《全国の温泉・浴場施設が頭を悩ます「脱衣所のスマホ使用」を助長する動画になんの疑問も抱かなかった》ということだ。

「バレそうになったことはない」
女性による脱衣所の盗撮

 もはや「社会常識」だが、温泉や公衆浴場の脱衣所ではスマホを使うことは「全面禁止」だ。ネットやメールを見ているだけでも係員が飛んできて注意する施設もある。なぜこんな対応になったかというと、スマホをいじっているふりをして盗撮をする被害が拡大しているからだ。

 2023年7月、性的姿態撮影等処罰法が施行。それまで各自治体の迷惑防止条例違反などに過ぎなかった盗撮を全国一律に厳罰化したのだ。この新法でできた「撮影罪」(ひそかに撮影)の認知件数は9066件、検挙人数は911人だ(2025年)。

 もちろん、これは「氷山の一角」に過ぎない。2023年、30年前から露天風呂で1万人以上を盗撮してきたグループが検挙されたことが注目を集めたが、「盗撮癖」のある人は実は皆さんが想像している以上にはるかに多く、それぞれが卑劣な手口でバレないように用心深く活動をしている(2023年2月2日 読売新聞)。

 例えば、2025年5月に逮捕された徳島県の元幼稚園職員だ。この人物は週末になると、香川と徳島の温泉施設4カ所に通いつめて脱衣所で男子児童のスマホ盗撮を行なっていた。5年間怪しまれることなく、数千人の男子児童が盗撮被害にあった。