そんな卑劣な盗撮犯の中でも最も卑劣で、摘発が難しいのが「女性に実行犯をさせる脱衣所・更衣室盗撮」である。わかりやすいのは2021年に温泉の脱衣所で女児をスマホ盗撮して逮捕された熊本県内の女性教諭だ。交際している彼氏に命じられて、複数の温泉施設で盗撮していた(2021年4月5日 産経新聞)。
このような盗撮犯を捕まえるのは難しい。今から十数年前、取材で「温泉や公衆浴場の脱衣所で女性の裸をスマホ盗撮する女性」に会ったことがある。闇金に法外な利子をふっかけられて多額の借金を背負った女性が返済のため、風俗で働くか、温泉や公衆浴場をまわって盗撮犯になるかと迫られ結局、盗撮グループに関わってしまったのである。
彼女はバレそうになったことは一度もないと豪語していた。まず「女が女の裸を撮影するわけがない」という先入観があるので、咎められたとしても、メールをチェックしていたなどといくらでも言い逃れができる。女性しかいないということで、電車のチカンのように周囲の人が協力して捕まえて、警察に突き出そうというようなムードもない。
しかも、施設側も犯行の現場を抑えるのは難しい。脱衣所なので防犯カメラも置けないし、係員を常に見張らせておくのもマンパワー的に大変だ。そもそも、スマホをいじっているだけの女性に「あなた、盗撮してません? ちょっとアルバム見せて」などと声がけするのは、施設側もかなり大きなリスクがある。
そこで悩んだ末、ホテル、温泉、公衆浴場を運営する側がたどり着いた現時点のベストな対応が「脱衣所ではスマホは使わないでください」というルールなのだ。
そういう意味では、今回の板野さんの脱衣所動画は営業時間外で貸切だろうとも「アウト」だ。世界最高峰のラグジュアリーホテルでなおかつ歴史のある奥日光の温泉の脱衣所で、オシャレに過ごす板野母子の動画がバズれば当然、それに触発されて、同じように脱衣所でカメラを回す女性YouTuberがあらわれても不思議ではない。
リッツカールトン日光は脱衣所での撮影に許可を下していないと言い訳をするだろうが、25年5月と今回、2回にわたって「脱衣所動画」が全世界に流れているというのは動かし難い事実である。
本来、25年5月の動画を見た時点で、リッツカールトン日光は板野さん側にこんなクレームを入れなければいけなかった。
「すいませんけれど、脱衣所での動画は、脱衣所でスマホを使わないでくださいという温泉・公衆浴場業界の呼びかけと真逆のものになってしまうので、このシーンはカットしていただけないでしょうか」
しかし、動画は公開された。それどころか、今回もまた板野さんが営業時間外の脱衣所で撮影した映像をアップすることを許してしまうというのは、個人的には温泉施設の管理者としてかなり「非常識」ではないかと思ってしまう。
もちろん、板野さんがどういう経緯で、営業時間外の大浴場に入ることができたのか、ホテル側がどこまで便宜を測っていたのかなど、今回の騒動ではまだわからないことが多い。ただひとつだけはっきり言えるのは「バズる」ということに重きを置いてしまうと人も組織も、こうもたやすくモラルやルールはおざなりになってしまうということだ。
インフルエンサーとコラボを検討している企業の皆さんは、ぜひお気をつけていただきたい。








