日本では生産性の低い
企業で働く人が多すぎる

 中小企業の生産性が低いのは世界共通だが、問題は、日本において、生産性の低いところで働いている人々の割合が高いということである。真実はわからないのだが、日本の生産性格差や賃金格差が欧米並みと考えておこう。

 すると、問題は、日本の大企業の売上げや雇用におけるシェアが小さいことである。より多くの人々が生産性の高い企業で働けば社会全体の生産性も高まる。

『政府支出を考える』書影政府支出を考える』(原田 泰編著、井上智洋編著、中里 透編著、金融財政事情研究会)

 すなわち、前出の三輪芳朗が述べたように、中小企業問題を、生産性の低い中小企業の生産性を高めることととらえるか、人々がより生産性の高い企業で働くかの問題ととらえるかである。

 すなわち、人々が生産性の高いところで働くことができればよいので(そのためには、生産性の高い大企業のシェアが高まることが必要だ)、中小企業の生産性を高めるかどうかは関係がないということだ。人手不足の時代に、そもそも、そこで働いている人がたくさんいるから中小企業は大事だという発想がおかしい。

 先の図表5-3でみたように、中小企業の雇用や売上げに占める比率は世界平均より10パーセントポイント高い。

 日本の中小企業の生産性や賃金が大企業の6割ほどであれば、中小企業の雇用シェアが10パーセントポイント下がることで日本全体の生産性は5%上がる(注4)。問題は、中小企業が発展していないことではなく、大企業が発展しておらずシェアを拡大していないことだ。

注4 大企業の労働生産性を1とすれば、現状の日本の労働生産性は、大企業の労働生産性1×大企業の雇用シェア(1-0.643)+中小企業の労働生産性0.6×中小企業の雇用シェア0.643=0.743である。大企業の雇用シェアが10パーセントポイント上がると大企業の労働生産性1×大企業の雇用シェア(1-0.543)+中小企業の労働生産性0.6×中小企業の雇用シェア0.543=0.783となる。したがって大企業の雇用シェアが10パーセントポイント上がると、労働生産性は5%(0.783÷0.743)上昇する。