無能さを自ら宣言する
危険な口癖

 課長止まりの管理職が、新しい方針を部下に伝える際に口にしてしまう危険なフレーズがあります。それは、「今回の会社の方針、俺(私)はそうは思わなかったんだけどね」「上の決定だから、仕方ないけどやってくれ」というものです。マネジメントの現場で非常によく耳にするフレーズですが、中間管理職としては絶対に口にしてはならない言葉です。

 本人は自分も同じ気持ちだと現場の味方をしているつもりなのかもしれません。しかし、ビジネスの観点では、「私は自分の意志も責任も持たない無能な管理職です」と自ら宣言しているようなものです。

 問題なのは、第一に、組織の決定に対する「当事者意識(オーナーシップ)」が著しく欠如していることです。自分は決定に関与していないという責任逃れの言い草は、リーダーとしての信用を失墜させます。

 第二に、部下のモチベーションを根本から挫(くじ)く点です。指導者である上司が納得していない施策に部下が本気で取り組むはずがありません。

 第三に、経営層からの評価が下がります。方針を現場に徹底させるどころか、管理職自身が組織のボトルネックになっている。これ以上のポジションを任せるのは危険だと判断されてしまうのです。

「伝書鳩」は出世しない
中間管理職の存在意義

 そもそも、中間管理職は伝書鳩ではありません。経営層からの指示を右から左へ流すだけなら、わざわざ中間に管理職を挟まず、全社に通知メールを一本送ればいい。

 経営学者の野中郁次郎は、「ミドル・アップダウン・マネジメント」という概念を提唱しています※。中間管理職はボトムアップでもトップダウンでもなく、経営が掲げる抽象的なビジョンやミッションを現場が動ける具体的な行動へと翻訳し、同時に現場で起きている個別具体的な課題を抽象化して経営陣へ吸い上げる、抽象と具体を行き来する架け橋であると言っています。

 課長止まりの人と役員に引き上げられる人の決定的な違いは、経営の決定に対して腹を括り、かみ砕いて自分のチームのストーリーとして再構成できるかどうかにあります。