機能不全に陥った管理職
初期症状は?

 私が人事責任者として組織を見てきた経験では、管理職が会社の方針を自分の言葉で説明できていないことをうかがわせる危険な兆候がいくつかあります。

 たとえば、新制度や新方針が示された際、本来なら部下は直属の上司に質問すべきところを、上司を飛び越えて、人事や経営層へ直接質問や相談にやってくるケース。これは「上司に聞いても埒(らち)が明かない」「上司が内容や意義を理解していない」と上司が部下から見切られている証拠であり、中間管理職が機能不全に陥っているサインと言えます。

 現場を守るという正義感が暴走し、会社への不満を代弁する「ネガティブ・オピニオンリーダー」として部下を率い、会社方針に反対してしまうケースもよく見受けられます。本人は現場を守っているつもりでも、組織の意思決定を担う側に立った管理職の役割を勘違いしているのです。

 もちろん、急成長する企業では、適切なマネジメント教育を行わないまま、役職に据えざるを得ないなど、組織側の育成責任の問題が背景にある場合もあります。

 部署が拡大し、一人が把握し管理できる人数の限界を超えたとき、適任者が不在でも誰かを管理職に置かなければ事業が停止する。そこで、チーム内で面倒見が良い先輩としてメンバーと和気あいあいとやってきた人物が、マインドセットの切り替えができないまま急に役職を付与されてしまうのです。

 ただし、一度管理職という役職を引き受けたなら、ただの仲良しメンバーのままでいることは許されません。異論があれば決定前に経営層へ伝え、決定後は自分の言葉で意味づけし、プロとして現場を動かす。役員に上がる人は、経営に盲従するのでも現場に迎合するのでもなく、この切り替えができる人なのだと思います。

【参考文献】
※ 野中郁次郎『知識創造の経営――日本企業のエピステモロジー』日本経済新聞社、1990年。
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