たとえば、経営陣から「今期は新規事業にリソースの2割を割く」という方針が降りてきたとします。課長止まりの人は「上から新規事業をやれと言われた。既存の仕事も忙しくて大変だと思うし、俺もどうかと思うんだけど、上の決定だから各自時間を捻出してやってくれ」と言います。これでは部下のモチベーションが上がるはずもありません。

 一方で、役員へ上りつめる人はこのように語ります。「会社が次の10年を生き抜くために、新規事業へ踏み出す決定がなされた。うちのチームの強みを生かせる絶好の機会だし、みんなにとっても新しいスキルを身につけるチャンスだ。具体的にどう時間や業務を工夫していくか、一緒に作戦を立てよう」。

 後者は、経営の決定に対して愚痴を垂れ流すのではなく、自分のチームのミッションとして再定義し、ポジティブな動機づけを行っています。経営層は、こうした言葉の端々から一段高い視座を感じ取り、将来のリーダーとしての資質を認めるのです。

「もし自分が役員だったら…」
中間管理職に求められる視点

 中間管理職と役員では、組織から求められる発揮能力(コンピテンシー)や問いの質が根本的に異なります。

 中間管理職に求められるのは、「どのように実現するか」という方法論(How)です。示された目標に対して、人員、予算、時間という社内リソースを正確に把握し、最適なチームを組成して実行する力が問われます。

 役員にHowより多く求められるのは「私たちはどこへ向かうべきか」という方向性やビジョン(Where)です。5年後、10年後の未来を描き、部分最適ではなく全社最適の観点で意思決定を行い、社内外の人を引きつける構想力と発信力が試されます。

 役員に上がる人は、課長時代から「もし役員なら、この方針をどう発信し、どういうストーリーとして語るか」という、より高い視点をもって思考しつつ、どのように現場に徹底させるかを考えています。だからこそ、「上が言っているから」という他人事の発言をすることは決してありません。